研究課題
特別研究員奨励費
申請者は、発がんのイニシエーションの起こりやすさを規定する生体内因子の解明を目的として本研究を始めた。これまでに得られた知見より、TGF・βがNrf2の活性を抑制することで、発がんのイニシーションが起こる頻度を上昇させているのではないかという仮説を立てた。TGF-βがNrf2の活性を抑制する分子メカニズムの解明を行う過程で、MafKがTGF-βの標的遺伝子であることを発見した。MafKは小Maf群転写因子に属し、Nrf2のパートナー分子である。マウス乳腺上皮細胞NMuMGを用いて樹立したMafK安定発現細胞では、予想外なことに浮遊培養におけるSphere形成の亢進、免疫不全マウスでの腫瘍形成、さらに上皮間葉転換EMTを誘導し腫瘍の浸潤・転移にも寄与していることが明らかになった。MafKがこれらの現象をどのように制御しているのかをさらに検討するため、MafKにより発現が変動する遺伝子の網羅的解析を行った。発現が亢進していた遺伝子のいくつかに対するsiRNAを用いて、発現を低下させた際のSphere形成について検討した。その結果、膜タンパク質であるGpnmbをノックダウンすることにより、Sphere形成が有意に抑制されることが明らかになった。NMuMG細胞にGpnmbを安定的に発現させた細胞株を樹立し、Sphere形成、腫瘍形成、EMT誘導について検討した。Gpnmb単独でもこれらを誘導することが明らかとなり、MafKによって発現が上昇するGpnmbが、がん幹細胞機能の獲得、EMT誘導に寄与しているという新たな知見を得ることができた。
(抄録なし)
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The Journal of Biological Chemistry
巻: 288(28) ページ: 20658-20667