研究課題
特別研究員奨励費
報告者は、アトピー性皮膚炎の発症における皮膚樹状細胞サブセットの役割の解明をまず行っていくこととした。皮膚には少なくとも3つの樹状細胞サブセット、すなわちランゲルハンス細胞(LC)、ランゲリン陽性真皮樹状細胞(L+dDC)、ランゲリン陰性真皮樹状細胞(L-dDC)が存在することが知られている。報告者はジフテリア毒素(DT)投与により皮膚のランゲリン陽性樹状細胞サブセットを選択的に除去することのできる、ランゲリン-ジフテリア毒素受容体-EGFP遺伝子改変マウス(Langerin-eGFP-DTRマウス)を用いて実験を行った。DTを腹腔内に投与すると、ランゲリン陽性の樹状細胞サブセット、すなわちLCおよびL+dDCを除去できる。投与後1週間経過すると、真皮にL+dDCをフローサイトメトリーにて確認できる。4週間経過すると、LC及びL+dDCのいずれもフローサイトメトリーにて確認できる。すなわち、DT投与後1週間から3週間の間、LCは除去されているが、L+dDCは存在している状態である。ここにマウスアトピー性皮膚炎モデルとしてovalbumin(OVA)反復貼付モデルを適応すると、LCのAD発症に果たす役割を検討することが可能である。LCを除去されたマウス(LC+)はLCを除去されなかったマウス(LC-)と比較して皮膚炎および組織スコア・血清中の抗原特異的IgE値のいずれも低値を示した。さらにLC-マウスでは抗原特異的なCD4+T細胞の増殖が有意に低下しており、所属リンパ節でのIL-4産生も低下していた。以上の結果から、LCがOVA反復貼付モデルにおいてTh2の誘導に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。Thymic stromal lymphopoietin (TSLP)は樹状細胞上のTSLP受容体に作用し、Th2を誘導する分子として知られている(J Exp Med 2005;202:1213-23)。OVA反復貼付モデルにおいて、OVA貼付によりLC上のTSLP受容体がupregulateされることが確認できた。さらに、LC上のTSLP受容体のTh2誘導に果たす役割を検討するために、TSLP受容体欠損マウス(TSLPR-/-)に対して骨髄キメラ技術を用い、LC特異的TSLP受容体欠損マウス(LC-TSLPR-/-BMC)を作製した。LC-TSLPR-/-BMCにおいてはOVA反復貼付モデルにおいて血清中の抗原特異的IgE値はTSLPR-/-BMCと同程度にまで低下していた。さらに、所属リンパ節でのIL-4産生もTSLPR-/-BMCと同程度に低下していることが確認できた。このことから、LCはOVA反復貼付モデルにおいて、TSLP受容体シグナルを介してTh2の誘導に重要な役割を果たしていることが明らかにされた。この研究の成果はThe Journal of Allergy and Clinical Immunology誌に掲載された。
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