研究課題
特別研究員奨励費
本研究の目的はMelarhizium属糸状菌を昆虫病原性糸状菌のモデルとして, 昆虫病原性糸状菌の昆虫および植物と関連した生態およびそれらと関連した進化の過程を明らかにすることである。本年度においては、本属糸状菌の昆虫2種に対する病原力が種間で異なることを示した。本属糸状菌の生育適温はどの種も25-30℃であったが、生育適温域においてM. flavoviride (Mf)の菌株は他の種の菌株よりも弱い病原力を示した。また、前年度までに種間で高温および低温条件における生育が異なることを示していたが、18℃と30℃においてカイコガおよびイニシロアリに対する病原力を比較した結果、M. pingshaense (Mp)およびM. robertsii (Mr)のような高温に適応した菌株は、M. brunneum (Mb)の菌株と比較して高温条件下での病原力が強い傾向を示した。比較に用いた4種はどれも他の研究では様々な宿主昆虫から分離されており、特定の分類群の昆虫に適応した種ではないと考えられるが、温度特性も合わせると病原力の種間差が明確に表れることが明らかになった。また、本属糸状菌の野草根圏からの検出率およびシバの根圏での定着能力が種間および菌株間で異なることを明らかにした。野草根圏からは、Mpが最も多く検出され、土壌から分離を行った調査と同様の結果であった。また、Mpおよびその近縁種のMrの菌株は、これらとは属内で比較的遠縁であるMfやM. majus (Mm)の菌株と比較して長期に渡りシバの根圏で高い密度を維持した。北米における調査結果も考慮すると、MpおよびMrを含む単系統群に高い根圏定着能力をもつ菌株が多く存在することが推察される。一方で、これまでに記載のある宿主昆虫、およびカイコガに対する病原力の比較から、この群の菌株は超や物と比較して昆虫に関する宿主範囲が広いと推察される。従って、MpおよびMrを含む単系統群では、昆虫および植物のどちらかに特化するというよりは、多様な昆虫への適応に関わる幅広い代謝能力などの獲得により、植物にも定着可能になったと考えられる。
(抄録なし)
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