研究課題
特別研究員奨励費
これまでに我々は薬物キャリアであるリポソームに着目し、点眼による網膜への薬物送達が可能であることを、脂溶性蛍光物質を封入したリポソームを用いて報告してきた。そこで、水溶性蛍光物質であるカルボキシフルオレセインを用いて、水溶性薬物の適用への可能性を検討した。その結果、水溶性蛍光物質を封入したリポソームを点眼投与した場合においても、網膜において蛍光発光が認められ、リポソーム点眼製剤が水溶性薬物にも適用可能であることを示した。薬理効果の観点から本点眼システムの有用性を評価するため、モデル薬物としてエダラボンを用い、薬物封入リポソームの調製法の確立と処方の設計を試みた。酢酸カルシウム勾配法によりリポソームを調製することでエダラボンを高効率で封入したリポソームが調製可能であることを見出した。次に、エダラボン封入リポソーム点眼投与後の薬理効果を、マウス網膜光障害モデルを用いて評価した。その結果、点眼投与されたエダラボン封入リポソームは、光照射により誘発されるa波及びb波の振幅の低下や視細胞萎縮を抑制した。エダラボン溶液投与群ではこのような網膜保護効果は認められず、リポソーム点眼製剤の有用性が示された。また、点眼後の網膜への送達効率の改善を目指し、粘膜付着性ポリマーであるキトサンでリポソームの表面を修飾し、点眼後の眼内挙動を評価した。その結果、リポソームを表面修飾することで網膜への送達効率は顕著に増大した。点眼後の眼の表面における滞留性の向上が網膜への効率的な送達に関与している可能性が示された。以上、リポソーム点眼製剤により網膜への薬物送達が可能であることを明らかにし、網膜障害モデルを用いてその薬効を確認することに成功した。また、網膜への送達効率をリポソームの表面修飾によりさらに改善可能であることを示した。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件)
European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics
巻: Vol.79 号: 1 ページ: 119-125
10.1016/j.ejpb.2011.01.019
Biological & Pharmaceutical Bulletin
巻: 34 号: 6 ページ: 894-897
10.1248/bpb.34.894
130000738067
Investigative Ophthalmology & Visual Science
巻: Vol.34 号: 10 ページ: 7289-7297
10.1167/iovs.11-7983