研究概要 |
アザアセンは有機ELや有機FETなどの有機電子材料に広く利用されているアセン化合物の窒素類縁体であり、アザアセンも同様に有機電子材料への応用が期待できる化合物である。しかし、これまでにあまり多くの研究がなされていない。そこで本研究ではテトラセンの四つの炭素を窒素に置き換えたキノキサリノキノキサリンに注目し研究を行った。またそこから誘導されるラジカルについても調査を行った。 昨年度は1,4位にメトキシ基、7,10位にメトキシキ基、ヨード基もしくはj,1辺にベンゼン環が縮環したキノキサリノキノキサリン誘導体の合成を行ったが、今年度は新たに1,4位にメトキシキ基、j,l辺にオフェン環が縮環した二種の異性体の合成を行った。これらの二種類の分子はチオフェン環の方向が異なるのみの違いであるが、UV-Visスペクトル、蛍光スペクトルに大きな違いが現れることを明らかにした。 加えて、キノキサリノキノキサリンのa,c,j,l辺にそれぞれ芳香環が縮環した誘導体の新規合成法の開発に成功した。オルトベンゾキノン類から三段階で多環式芳香族化合物を簡便に合成することが可能である。この合成法を用い、テトラベンゾ誘導体、ジベンゾジチエノ誘導体、さらに直鎖アルキル基が置換したテトラベンゾ誘導体の合成に成功した。これらの化合物は共役系の拡張に伴い先のメトキシ基置換キノキサリノキノキサリン類よりも酸化電位の低下がみられた。現在これらの化合物について共同研究によりFET特性について研究を進めている。
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