研究課題
特別研究員奨励費
生物が遠く離れた場所にある水や食物を得るために、人間社会においては給与や年金を得るためには、労働負荷や遅延時間に耐えなくてはならない。一方、経済学や心理学的知見から、ヒトを含めた生物は時間的に離れた報酬の価値を低く見積もる性質が知られている。したがって、労働負荷や遅延時間を必要とする報酬を獲得するためには、報酬価値の時間割引を低く保つ能力が不可欠となる。これまでに薬理学的手法を用いた研究から、脳内セロトニン濃度が減少すると、遠い将来に得られる報酬の獲得が困難になることが明らかにされている。しかしながら、セロトニンニューロンの起始核である背側縫線核が労働負荷を必要とする報酬の獲得にどのように関わるかを電気生理学的に調べた研究はない。本研究では報酬スケジュール課題遂行中のアカゲザル背側縫線核から単一ニューロン活動記録を行い、将来得られる報酬やその獲得に関する情報がどのように表現されているのかを調べた。報酬スケジュール課題では、サルは報酬を獲得するために複数回試行(スケジュール)を成功する必要があった。背側縫線核のニューロン反応は、1)スケジュールの開始、2)報酬の予測、3)報酬の獲得、4)獲得した報酬量、の4つのタイプに分類することができた。また、情報量解析を行なったところ、報酬までの距離やスケジュールに関する情報は平均発火頻度よりも、ニューロン反応の時間変化に多く含まれていることが明らかになった。本研究によって、背側縫線核ニューロンが将来得られる報酬の獲得に関わることが示唆された。
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The Journal of Neuroscience
巻: 33(8) 号: 8 ページ: 3477-3491
10.1523/jneurosci.4388-12.2013