研究概要 |
申請者はこれまでCygnus LoopやG156.2+5.7といった重力崩壊型の超新星残骸のX線観測から重元素の非対称分布を明らかにしてきた。次に典型的なシェル型超新星残骸であるSN1006に着目し、すざくの長期観測データで内部のイジェクタの重元素分布を調査した。スペクトル解析の結果、この天体のSi, S, Ar, Feといった重元素量を初めて場所ごとに測定することができた。SN1006は希薄な周辺環境で爆発したことで知られている。このため、シェルの形態はほぼ球形に近い。ところが、我々はこのような点対称の構造の内部で上記の重元素が予想外に南東に偏って分布することを発見した。これは爆発時にすでに重元素が非対称に分布していたことを示唆する。SN1006の起源はIa型爆発と考えられるが、点対称のシミュレーションでは爆発が起きないことが知られている。したがって、我々の突き止めた観測事実は、Ia型爆発において爆発時の星内部で何らかの非対称性が必要であることを強く示唆する。先行研究に置いて銀河系外の超新星の観測から非対称爆発を示唆する結果が得られていたが、我々の発見は系内の超新星残骸から、直接この非対称性を検出した初めてのケースである。この結果を論文にまとめ、現在Astrophysical Journalに掲載された。また、国内外の研究会でこの研究成果について招待講演を含む複数回の発表を行った。また、この成果を京都大学からプレスリリースし、朝日新聞(7月2日夕刊10面)、京都新聞(7月3日26面)、産経新聞(7月3日25面)および日本経済新聞(7月3日夕刊14面)に掲載された。以上の結果および前年度に研究したW44の成果をまとめて日本天文学会の学会誌「天文月報」に発表した。
|