研究概要 |
2013年度は、昨年度までに習得した蛍光顕微鏡を用いた定量的な微生物分析手法(CARD-FISH法)と、次世代シーケンサーを用いた網羅的な微生物分析手法を用いて、同一サンプルの土壌微生物群集を分析して「手法によるバイアス」を検討した。その結果、近年急速に広まっている次世代シーケンサーを用いた解析では、微生物の群集組成を定量的に把握できていないことが明らかになった。近年の土壌微生物学での次世代シーケンサーによる分析の隆盛を考慮すると、この事実は認識しておく必要がある。 また、重要な移動分散経路である空気中の微生物細胞の密度と群集組成を推定した。2013年5月から週1回の頻度で滋賀県大津市の二次林周辺で空気のサンプリングを行った(時間・労力・資金の都合上、当初予定していた野外操作実験をこの観測に置き換えた)。空気サンプリングは携帯型ポンプを用い、概ね10:00-15:00の間に行った。約1,000Lの空気を0.2μmのフィルターを用いて濾過し、フィルターの半分を微生物群集組成解析のためにDNA抽出用とし、もう半分を全細胞数計測のために固定サンプルとした。固定サンプルはDAPI染色を行った後、蛍光顕微鏡と自らが開発した画像解析プログラムを用いて、全細胞数を測定した。平均すると空気1Lあたり約430個の微生物細胞が検出された。従って、相当数の微生物細胞が野外の空気中を漂い分散していることが明らかになった。 2013年度は2本の主著論文、1本の共著論文を出版した。また、他に1本が改訂中、1本が査読中である。研究発表は、個体群生態学会のシンポジウムと日本生態学会の自由集会で招待講演を行い、日本生態学会の英語口頭発表では微生物・生態系生態学セクションで最優秀賞を受賞した。
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