研究課題
特別研究員奨励費
私は広視野ガンマ線観測のため、ガス飛跡検出器(TPC)とシンチレーションカメラ(PSA)からなる電子飛跡検出型コンプトンカメラ(ETCC)の開発を行ってきた。本研究の大きな目的のひとつはETCCの撮像性能を強い放射線占領下のため雑音事象の多い宇宙環境である気球高度で実証試験を進める科研費基盤S(代表 谷森)を強く推進するため、限られた電力・スペース・重量の条件の中でETCCの大型化を成功させることであった。これについて昨年度までに気球搭載型ETCCのハードウェアを完成させることができた。本年度は、ETCCの基礎性能を調査し、気球高度においてかに星雲を撮像できる要求仕様である有効面積が典型的に0.5cm2以上、角度分解能が半値全巾で10度以下という条件を果たして満たすことを、実験室で密封線源を用いることで測定し、評価を行った。その結果、有効面積は0.7 cm2 @ 356 keV, 角度分解能が5.3度 @ 662 keVをもつことを確認し、当初の要求仕様を満たす気球搭載型ETCCを制作したことを確認し、これらの成果を論文にまとめた。さらに、宇宙環境に近い気球高度での撮像性能を調べるため、得られた基礎性能のETCCを基に、気球高度での雑音事象、天体から観測される光子数を数値計算することで有意に天体を検出できるか議論した。気球実験の現実的な解を検討し、気球の打ち上げ所の一つであるアメリカフォートサムナー、高度40kmにて1日のフライトを行った場合、かに星雲を6時間程度観測することができ、5σ以上の統計的有意度で検出できることを数値計算により確認した。さらに、ETCCの広い視野を活かしてかに星雲だけでなくCyg X-1とGRO JO422+32も同時に観測が可能であり、7時間の観測時間が見込まれ統計的有意度がやはり5σ以上期待できることを新たに明らかにし、その成果を論文に発表した。
2: おおむね順調に進展している
当初の目的のひとつである広い視野をもつガンマ線カメラの開発は、気球搭載型を完成させその性能を実験的、シミュレーション、数値計算により確かめることができ、目標を達成した。気球を用いた観測実証試験については、気球打ち上げ場の都合により不可能となったため、事実上遂行不能となったが、地上で可能な限りの撮像実証試験を成功させることで、次世代型のガンマ線カメラによる高エネルギー宇宙物理解明への展望を拓いた。
(抄録なし)
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JPS Conf. Proc.
巻: 1 ページ: 13099-13099
Journal of Instrumentation
巻: (印刷中)
Proceedings of the 32nd International Cosmic Ray Conference
巻: (CD-ROM)
http://www-cr.scphys.kyoto-u.ac.jp/