本年度は、まず昨年度の研究成果について論文として出版した。この成果は、米国科学誌Astrophysical Journal、754号に受理され出版された。 昨年度の段階では磁極の消滅現象と出現現象について判別された数が少なかったため、より統計的な結果を得られるように、2つの面から研究手法を改良した。 1つは、より多くのイベントを含んでいるようなデータがないか、ひので衛星による観測データのデータサーベイを行った。データサーベイの結果、時間間隔は解析データよりも長いが(昨年度データは1分間隔、新データは5分程度の間隔)観測期間が長いデータが存在した。しかし、昨年度開発したコードはこのデータに適用できなかった。なぜならば、5分の観測間隔の間に磁極はひので衛星の空間分解能よりも大きく動いてしまうため、時間間での磁極追跡ができないからである。そこで、申請者達は、連続画像間で磁極の比較をするときに空間的な余白をとれるように改良した。その結果、5分の観測間隔を持つデータにも適用できるようになった。 もう1つは磁極内に含まれる磁束量について、その時間発展を追う際の手法を改良した。開発したコードでは、磁極内の磁束量変化においてその増加傾向と減少傾向から消滅現象と出現現象を判断している。その際の磁束量変化検出精度の向上により、これらの検出精度向上を目指した。試行錯誤の結果、磁極内に含まれる磁束量の時間方向についてメディアンフィルターとアヴェレージフィルターを組み合わせて用いることで、両現象の自動判別効率を格段に向上させることに成功した。 これらの磁極判別・追跡コードの改良と新たな観測データサーベイにより、消滅現象と出現現象についてより統計性を増した結果を得た。
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