研究課題
特別研究員奨励費
鉄四価オキソ錯体は常温常圧という温和な条件下で多種多様な酸化反応を行う非常に活性の高い化学種であり、その反応性を理解し制御することは効率的な酸化反応系の構築へとつながる。鉄四価オキソ錯体は種々の酸化酵素中でも触媒活性種として働いていることが知られており、生体では高効率、高選択的な酸化反応を行うために、様々な因子によってオキソ錯体の反応性を精密に制御している。その一つが、オキソ配位子とルイス酸の相互作用であり、多様な酸化酵素中にこのような例は見られる。しかし、これまでの研究ではそのような効果はあまり考慮されてこなかった。そこで本研究では、スカンジウムイオン等のルイス酸として働く金属イオンによる鉄四価オキソ錯体の反応性制御について検討した。当研究代表者は一年目、二年目の研究で金属イオンは鉄オキソ錯体と相互作用することで電子移動酸化を促進し、この電子移動特性の制御により有機化合物の酸化反応の生成物、反応速度が大きく変化し、その機構の詳細について示している。最終年度である三年目では、プロトンが鉄四価オキソ錯体の電子移動特性に与える効果、炭化水素のC-H結合切断を伴う反応やスルフィドの酸化反応に与える効果を、スカンジウムイオンに代表される金属イオンが与える効果と詳細な比較を行った。その結果、カウンターアニオンが同種の場合、プロトンの方が自由エネルギーに与える効果が大きく、電子移動の再配列エネルギーに与える効果は小さい事が分かった。これは、金属イオンはプロトンより大きなイオン半径を持ち、カウンターアニオンを数個配位させている場合が多く、オキソ錯体と相互作用する際に、より大きな立体的な制約を受けるためだと考えられる。
(抄録なし)
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