研究課題
特別研究員奨励費
宇宙の始まりであるビッグバン以降、宇宙における鉄の量は単調に増え続けている。恒星は宇宙空間のガスから形成されるため、宇宙初期に生まれた恒星は誕生時の鉄の濃度が低く、最近生まれた恒星は誕生時の鉄の濃度が高い傾向がある。これまで、恒星表面の鉄の濃度[Fe/H]は誕生時の「先天的」な値から変化しないものと考えられており、恒星の年齢を測る指標として長らく利用されてきた。一方、この通説に反し、鉄の量が少ない恒星の表面に鉄の多いガスが衝突・付着することで恒星表面の鉄の濃度が増加するという仮説も提唱されていた(金属降着仮説)。しかし、この仮説の観測的検証は30年以上棚上げされてきた。私は、我々の住む天の川銀河に含まれるG型・K型の主系列星約1万天体の軌道運動と表面の鉄の濃度を解析し、上述の仮説を検証した。その結果、天の川銀河のハローに属するG型主系列星の中には、仮説から予想される通り、表面の鉄の濃度が増加しているものが存在する可能性が高いことが判明した。G型主系列星は、太陽近傍で観測可能な恒星の中で、最も個数が多い恒星である。これまで、多数のG型主系列星の表面の鉄の濃度が測定され、天の川銀河の歴史が調べられてきた。しかし、こうした過去の研究はG型主系列星の表面の鉄の濃度が不変であるという通説の仮定に基づいている。今回の研究により、この仮定が必ずしも妥当ではないことが明らかとなり、天の川銀河の歴史描像に今後修正が必要となる可能性がある。また、今回の成果は、宇宙で最初に生まれた第一世代星の研究にも大きな影響を与える。第一世代星は、誕生時は表面に鉄を一切含まない星である。しかし、もし第一世代星が金属降着現象の影響を受け、表面に鉄が付着すると、その星は第一世代星でないかのように「変装」してしまう。第一世代星が未発見である事実は、金属降着現象によって説明される可能性がある。
(抄録なし)
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