研究概要 |
細胞核は強光条件下で細胞側壁に定位する「光定位運動」を行う(Iwabuchi et al. 2007). この運動は紫外線A/青色光受容体フォトトロピンやアクチン細胞骨格により厳密に制御されており(Iwabuchi et al. 2010), 紫外線を含む強光によるDNA損傷や細胞死を防ぐ上で重要な役割を果たしている(論文準備中). 平成25年度は, 核光定位運動の仕組みおよびその進化的側面に着目し, 下記の成果を得た. 1. コケ植物タイ類ゼニゴケにおける核光定位運動の解析を実施した. 核光定位運動の存在は, シロイヌナズナ(種子植物)およびホウライシダ(シダ植物)の二種でのみ確認されているが, その他の種では調べられていない. そこで陸上植物進化の基部に位置するゼニゴケを用いた。ゼニゴケ葉状体を暗所で2日間静置したところ, 核は特定の場所に定位し, 続いて青色強光を3時間照射すると, 核は細胞側壁に定位した. 側壁への核の移動は, 青色光受容体フォトトロピンおよびアクチン細胞骨格により制御されることを, 突然変異体や阻害剤実験により明らかにした. 2. EMS処理およびT-DNA挿入により作出したシロイヌナズナ突然変異体のプールから得られた, 核の暗所定位に異常を示す2. 系統を解析した. アクチンが核定位運動に必須であることを遺伝学に実証することができた. また, 細胞内膜交通が核定位運動に関与するという興味深い発見があった.
|