研究概要 |
本年度は,逆数学研究と周辺分野のつながりを意識し,逆数学と関連分野の新たな融合を求めて研究を行った.中心的に行った研究は,1.ランダム性の相対化と関連する算術モデルの拡張性について,2.超準解析の逆数学と複素解析学への応用について,3.組み合わせ理論の逆数学,特に証明論的な強さの分析,4.自己埋め込み定理を用いた算術の公理系の特徴付け,の4点である.以下,順に詳細を述べる. 1は,東北大の樋口氏,ペンシルバニア州立大学のSimpson教授,Hudelson氏との共同研究である.Martin-Lofランダム性や部分ランダム性,および関連するより弱い複雑性の概念についてその相対化の性質を調べた. 2は,米子高専の堀畑氏と長年取り組んできた課題であり,超準公理・超準解析学のテクニック・算術の公理系を包括的に結びつけた枠組みを構築し,さらにそれを標準化された方法で解析学の逆数学研究に応用していく物である.応用としては,特にリーマンの写像定理の周辺を中心とした複素解析学の逆数学について調べた.本年度はこれまでの研究の集大成として,散逸していた結果を共著論文にまとめた.3では逆数学分野において長年課題とされている,ラムゼイの定理の強さについて今まであまり使われていなかった新たな手法を用いて研究を行った.用いた手法は,4に関連する算術のモデルの分野で使われていた古典的な手法を再検討した物で,これにより弱い帰納法公理の下でのラムゼイの定理の強さについて,ごくシンプルな証明で画期的な結果を得ることができた. 4は算術のモデルに新しいテクニカルな特徴付けを与える研究である.キーは自己埋め込み定理と呼ばれる算術のモデル理論において古典的かつ重要な定理であり,この定理をどの程度一般化できるかによってモデルの性質,及び公理系を分類を行っている.部分的にはGhent大学のWong氏とも共同で研究を進めており,現在,結果の一部を論文にまとめている途中である.
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