研究概要 |
近年、歯周病が様々な全身疾患の発症や進行に関与することが明らかになってきた。その中でも誤嚥性肺炎は、口腔内細菌を誤嚥することにより発症し、高齢者で致死率が高い疾患である。歯周病原細菌の一つであるPorphyromonas gingivalis (P. gingivalis)は、誤嚥性肺炎病巣から高頻度で検出されることが報告されているが、両者の関連については明らかになってない。そこでP. gingivalisを気管支に感染させた際の肺での炎症の惹起と細菌の排除、もしくは排除からのエスケープ機構について、気管支感染モデルマウスを確立し検討を行うこととした。平成25年度は引き続き研究員の所属する大学の動物実験施設の改修工事のために、マウスを用いた感染実験が行う事ができなかったため、以前のin vivo感染マウスモデルにおけるサンプルを用いて解析を行った。 C57BL/6マウスに対し麻酔後、頚部正中を縦切開して気管支を剖出し、PBSで懸濁した10^8CFUのP. gingivalis ATCC33277株を注入し感染させ、5時間後の気管支肺胞洗浄液(BALF)を採取した際のサンプルを用いた。BALF中に含まれるサイトカイン(TNF-a, IL-1B, IL-6, IL-12p70, IL-17A)、ケモカイン(MIP1a, KC)産生量をELISA法にて測定したところ、TNF-α, IL-1β, IL-6, MIP1a, KCの発現は上昇したものの、IL-12p70, IL-17Aの発現は有意に抑制されていることが明らかとなった。これら2種のサイトカイン産生の抑制がP. gingivalisによる免疫エスケープ機構に密接に関係している可能性がある。今後はこの結果に及ぼすジンジパインやTLRの影響を、ジンジパイン欠損株、TLRノックアウトマウスをそれぞれ用いて継続する予定である。
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