研究概要 |
磁場閉じ込め核融合研究において経済的な核融合発電を実現するため, 電子温度勾配(ETG)不安定性(ETGモード)駆動乱流による異常輸送の機構解明が求められている. 本年度は, ETGモードの励起機構と帯状流に相当するE×Bシアによる抑制効果を明らかにすることを目的として基礎実験を行ない, 以下のことを明らかにした. 1. プラズマ空間電位勾配に起因するE×Bシアの形成及び制御 同心円状に2分割された電子源の中心電極と周辺電極に異なる電位を印加することで, 実験領域の空間電位を独立に制御し, その空間勾配に起因するE×Bシアの形成及び制御に成功した. 2. ETGモードに対するE×Bシアの効果 ETGが大きい場合と小さい場合で, 磁力線垂直電場に起因するE×BシアによるETGモードの抑制機構が異なることを明らかにした. ETGが小さい場合, E×BシアのETGモードに対する効果を調べた結果, 強いE×BシアによってETGモードが抑制されることを見出した. ETGが大きい場合, E×Bシアの強度が強い場合には同様に抑制されるが, E×Bシアの強度が弱い場合には, 垂直電場の向きが径方向外向きの場合にはETGモード強度が高く維持され, 径方向内向きの場合には, ETGモードとドリフト波モードとの非線形結合が助長され, エネルギーが移送されることでETGモード強度が減少するという新たなETGモードの抑制機構を解明した. 以上の実験結果は, 従来とは異なるETGモードの抑制機構を初めて明らかにしており, この成果は, 一般に解明が困難とされている核融合プラズマの最先端乱流・異常輸送現象に有用な知見を供すると考えている.
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