研究課題/領域番号 |
11J01675
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
無機化学
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
池上 篤志 九州大学, 大学院工学研究院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2011 – 2013
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研究課題ステータス |
完了 (2013年度)
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配分額 *注記 |
1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
2013年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
2012年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
2011年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
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キーワード | 多核錯体 / 官能基修飾 / 水素結合 / 二量体構造 / ポルフィリン / ピレン / 光誘起電子移動 / 混合原子価状態 / メタロセン / 電子的相互作用 / 静電的相互作用 / レドックス活性 / フェロセン / 長距離ホール移動 |
研究概要 |
MgイオンとRuイオンから成る混合金属錯体は、架橋カルボン酸イオンの置換反応を利用することで、機能性ユニットを多核コアに集積化させることが可能である。これまでに酸化還元活性なフェロセンやルテノセンなどのメタロセン集積体の合成を行い、その電気化学特性を明らかにしてきた。本年度は、機能性ユニットとして光物性が知られているピレンとポルフィリンを集積化させた混合金属錯体を合成し、単結晶X線構造解析による同定や発光スペクトル測定による光物性評価を行った。 混合金属三核錯体にピレンカルボン酸を反応させ配位子置換反応を行い、架橋部位に4つのピレンユニットを有する多核錯体の合成に成功した。得られたピレン集積体の発光スペクトルを測定したところ、ピレンカルボン酸に比べ98%もの蛍光強度の減少が見られた。この結果より混合金属多核錯体はピレンカルボン酸の優れたクエンチャーとして働くことが示された。合成したピレン集積体はさらなる架橋配位子の置換反応により、ピレンカルボン酸を多核錯体の骨格構造から脱離させピレン部位由来の蛍光を回復させることができるため、配位子置換反応をトリガーとした蛍光センサーとしての利用が期待できる。 ポルフィリンユニットを集積化させた化合物についても同様の配位子置換反応により、目的とする化合物が得られた。ポルフィリンユニットの発光強度は、金属イオンに配位することで大幅な強度の減少がみられ、ポルフィリン集積体においても、混合金属錯体はクエンチャーとして働いていることが示された。単離した生成物にさらに酢酸亜鉛を加え反応させると、ポルフィリンユニットへのZnイオン導入が可能であることが明らかとなった。このZnポルフィリンの集積体では、X線結晶構造解析によって4つのユニットが密集して存在している様子が見られた。溶液中においてはフラーレンとのホスト-ゲスト相互作用に基づくUV-visスペクトルのピークシフトが見られ、ホスト分子として機能することが示された。 このようにπ共役系の発光性分子を集積化させることで発光強度の制御が行えるだけでなく、広がったπ空間に基づく超分子相互作用が発現する非常に興味深い知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
混合金属錯体における架橋配位子の置換反応は、カルボン酸を有する様々な配位子に適用でき、汎用性の高いものであることが明らかとなった。本研究では、カルボン酸の種類を変えることで容易に酸化還元特性や光特性を有する官能基を修飾することに成功した。多核錯体と官能基との相互作用により、混合原子価状態の発現や発光強度の減少が見られ、錯体化学と電気化学や光化学が組み合わさった分野の発展に貢献できる成果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
カルボン酸の選択により多核錯体に機能付与が行える観点から配位子の分子設計は非常に重要な点である。アトロプ不斉空間の創成においては結合周りの自由回転を抑えられるような配位子のデザインが必要となる。具体的には、アントラセンカルボン酸のような、剛直な構造を持ち多核錯体のターミナル部位に環構造が張り出し、配位サイトに大きく影響を与えるものが適していると考えられる。分子のコンフォメーションに関する情報は結晶構造解析の他、分子計算から得られる情報と合わせて取り組んでいくこと必要である。また、温度可変NMRによるスペクトルの測定により分子運動の温度依存性を調べ、不斉認識や分子メモリへの応用展開が望まれる。
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