研究概要 |
前年度に報告したコラーゲンを基材としたscaffoldは,β-TCPを複合させることで力学特性を向上させることができたが,10~15kPa程度と非常に低い圧縮弾性率であった.そこで,本年度は力学特性のさらなる向上を目指し,β-TCPを基材としたscaffoldにコラーゲン相を導入した複合系2相多孔体を作製し,前年度と同様に細胞培養実験及び,力学試験を行った.また比較対象としてβ-TCPのみのscaffoldも同様の実験を行った.作製した2相多孔体は,構造安定性が大きく向上し,圧縮力学特性も向上した.また,気孔径については,平均的に200μm程度であり,内部への細胞侵入・増殖には適した気孔サイズであると考えられる.細胞数は28日まで増加を示し,細胞増殖の場として作製した多孔体が機能していると考えられる.次にALP活性において,14日以降に増加を示したことから,幹細胞の骨芽細胞への分化が行われていることが考えられる.骨分化マーカに関する遺伝子発現量も2相多孔体の方が大きな値を示し,骨芽細胞への分化が有意に進行していることが示唆された.β-TCP/collagen scaffoldでは,骨格に沿った細胞増殖だけでなく,コラーゲン線維や膜上での細胞の増殖が可能となった. 以上の結果より,β-TCP scaffoldの空孔部にコラーゲン多孔体を導入することで,乾燥・湿潤状態双方での力学特性が向上した.さらに細胞培養実験において,β-TCPの持つ細胞の増殖・分化促進機能に加え,細胞増殖領域の確保が可能となった.
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