研究課題
特別研究員奨励費
有機半導体は次世代のエレクトロニクス材料として産業面から大きな期待が寄せられており、更なる高移動度化に伴う応用範囲の拡大という点からも、その伝導特性を決定するメカニズムの解明が待ち望まれている。有機半導体の伝導性は、π共役系有機分子間のπ軌道のオーバーラップに依存するため、圧力印加に伴う結晶格子の変化に対して敏感に応答する事が期待される。本研究では、電界効果によってキャリアを誘起された有機半導体界面の伝導特性を決定するメカニズムの指針を得るため、圧力印加による分子間距離の収縮を通して、有機半導体の輸送特性と結晶構造・分子構造の関係を調べた。前年度に世界で初めて開発した有機半導体電界効果トランジスタ(OFETs)の圧力下における輸送特性測定の手法を用いて、有機半導体の基本となるπ共役骨格のみで構成されたacene系分子であるテトラセン、ペンタセン及びテトラセンに4つのフェニル基を付け加えた分子構造を持つルブレンの移動度の圧力変化を測定・比較し、分子構造が有機半導体の輸送特性に与える効果を評価した。また、C原子、H原子のみからなるacene系有機半導体分子と比較するため、より大きな原子軌道を持つS原子を含むジナフトチエノチオフェン(DNTT)の圧力下FET特性を測定し、ヘテロ原子に起因すると考えられる、ルブレンの数倍、シリコンの数十倍もの非常に大きな圧力に対する移動度増加率を見出した。更に、有機半導体における輸送特性と結晶構造の関係を明確にするため、(株)リガクと共同で圧力下単結晶X線回折用ダイアモンドアンビルセルを開発し、SPring-8 BL02B2においてルブレンの単結晶X線構造解析実験を行い、加圧状態における詳細な結晶構造の情報を得た。この圧力下結晶構造を元に密度汎関数法を用いて各圧力における分子間のπ軌道の重なりの大きさを計算した所、圧力下送特性測定から得られた移動度の圧力依存性を支持する結果を得た。これらの実験によって有機半導体のキャリア伝導機構に対する結晶構造・分子構造の効果をとらえ、更なる高移動度有機半導体分子開発の指標を得た。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件) 備考 (2件)
PHYSICAL REVIEW LETTERS
巻: 110 号: 9
10.1103/physrevlett.110.096603
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http://www.sanken.osaka-u.ac.jp/labs/aed/index.html