研究課題/領域番号 |
11J02179
|
研究種目 |
特別研究員奨励費
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
応用光学・量子光工学
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山口 啓太 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2011 – 2013
|
研究課題ステータス |
完了 (2013年度)
|
配分額 *注記 |
1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
2013年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
2012年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
2011年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
|
キーワード | テラヘルツ波 / スピン制御 / スピン再配列転移 / 磁性体 / フェムト秒パルスレーザー |
研究概要 |
昨年度から続いてオルソフェライトDyFeO_3が示す、abrupt型スピン再配列転移のテラヘルツ時間領域分光による観測を行った。この物質はErFeO_3と異なり、比較的弱い外部静磁場(0.1テスラ程度)により再配列温度が数ケルビン変動することに着目し、磁場印加時の磁気共鳴周波数の変化を調査した。その結果0.1テスラの磁場で最大13GHzという大規模なシフトを示すことが判明した。これは外部磁場が鉄スピンに直接作用することで生じる周波数シフトに比べて5倍程度大きく、希土類Dyスピンを介した磁場の増幅と捉えることが可能である。 次に、可視ポンプ光による電子励起がテラヘルツ波で励起したスピン歳差運動へどのような影響を与えるかを調査する目的でポンププローブ分光を行った。その結果、可視光励起による鉄スピンの異方性の高速な変化が、テラヘルツ誘起スピン歳差運動の周波数変化として観測可能であることが確認できた。 最後に高強度テラヘルツ波による超高速スピンダイナミクスを観測した。約200kV/cm程度のテラヘルツ磁場によって励起したコヒーレントなスピン歳差運動を可視プローブ光のファラデー回転を用いて検出した。まずErFeO_3においてこれまでに報告された例のない磁気共鳴モードの微細な分裂を発見した。この分裂機構の理論的な解明は現在進行中であるが、鉄スピンペアに働くジャロシンスキー・守谷相互作用程度の有効磁場による分裂と同程度の分裂であることが分かっている。その他にも、スピン歳差運動の非線形・非調和的な振る舞いと考えられる特徴的な応答を複数確認することができ、これらはテラヘルツ磁場による強励起効果の可能性がある。これらの振る舞いに関してはより強いテラヘルツ波を使用した実験等、今後の進展が期待できる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
(最終年度)本年度は昨年度からの課題であった可視ポンプ-テラヘルツプローブ実験の成功の他にも、高強度テラヘルツ波による強励起効果とみられるこれまで報告されたことの無かったスピン系の振る舞いを発見することができたため、当初の計画以上の進展があったと考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
(最終年度)本年度の成果として高強度テラヘルツ波によるスピンの強励起効果・非線形効果と考えられる振る舞いを発見したことが挙げられるが、これらの多くの理論的な解釈は完全にはついていないため、これらの現象の考察を進めることが今後の課題の一つである。その他に、今回、強いテラヘルツによるスピンの強励起の可能性を示唆する結果が得られたので、より強いテラヘルツ波を用いた実験をすることで更なる進展が期待できる。
|