研究課題
特別研究員奨励費
スリランカ東北部で原因不明の慢性腎疾患が多発しており、この医療問題が人的損失と医療費を増加させ、経済発展の阻害要因の一つとなっている。このような現状を打開するため、筆者は慢性腎疾患の原因を解明を行う。この研究は、京都大学医学研究科環境衛生学分野の小泉昭夫教授の率いる筆者等のチームとスリランカ民主社会主義共和国のペラデニア大学のDr. Nimmi Athuraliyaのチームによる共同研究である。この疾患の多発する要因として、遺伝背景と環境要因が関与すると思われる。慢性腎疾患の解明により、予防施策の確立や早期診断に資する。1.環境有害物質検討:発症地域由来の米と飲料水サンプル中の重金属濃度は、推奨範囲内であった。血清フッ化物濃度は、eGFRと逆相関を示し、CKDu進行に関連する二次要因であるようにみえる。また尿検査によって軽度のヒ素暴露を明らかにした。2.病理的検討:5例のCKDu患者の腎生検について電子顕微鏡分析を行い、糸球体基底膜の軽度の皺、内皮下の浮腫や足突起の部分的な消失を明らかにした。3.疫学的検討:2011年のサンプルプログラムで収集したCKDu症例と対照のデータの分析を行った。農業、喫煙、ベテルチューイング、噛みたばこや蛇咬傷の既往歴が対照と比べ、CKDu症例で高かった。4.遺伝疫学的検討:GWASと全Exomeシークエンス解析により、各々の方法でSLC13A3とKCNA10遺伝子上にCKDu病因と関連した主要な変異体を同定した。更に症例でのみLAMB2やSLC39A8遺伝子で希少な変異体が得られた。機能解析により、SLC13A3プロモーター活性とeGFR間での有意な関連を明らかにし、高プロモーター活性がCKDuの保護効果を持つことを示唆された。以上の内容でJournal of Human Geneticsへ投稿中である。
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http://130.54.180.142/index.htm