研究課題/領域番号 |
11J02383
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
環境生理学(含体力医学・栄養生理学)
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研究機関 | 総合研究大学院大学 |
研究代表者 |
高山 靖規 総合研究大学院大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2011 – 2012
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研究課題ステータス |
完了 (2012年度)
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配分額 *注記 |
1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
2012年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
2011年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
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キーワード | TRPV4 / アノクタミン1 / 脈絡叢上皮細胞 / 体温調節 / 寒冷暴露 |
研究概要 |
transient receptor potential vanilloid 4チャネル(TRPV4)は視床下部・正中視索前野での発現が報告されている非選択的カチオンチャネルであるが、これまでその役割はほとんど解明されてこなかった。特に、TRPV4発現ニューロンを可視化することが困難であったため、電気生理学的検討が全く進んでいなかった。そこで、申請者はテトラサイクリン応答性配列とテトラサイクリン感受性転写活性化因子を2A配列を用いて繋げたトランスジェニックマウスを作成した。この遺伝子改変マウスでは、TRPV4陽性細胞においてEGFPがプロモーター活性とは独立して無制限に発現することが期待されたが、実際にこのシステムはin vivoでは機能しておらず、EGFP発現は本来のTRPV4プロモーター活性に依存しているものと考えられた。そのため、ニューロンにおいてはEGFP発現をもとにTRPV4陽性細胞を見分けることができなかった。しかしながら、脈絡叢上皮細胞(CPEC)においては明確なEGFP発現を観察できた。CPECは脳室内に存在している細胞であり、脳脊髄液分泌を司っている。免疫染色を行った結果、深部体温下で活性化し得るTRPV4のCPEC脳室側での局在が示された。そのため、TRPV4は脳脊髄液分泌に影響するであろうことが考えられたが、これまでその分子機構は明らかにされでいない。 これに加えて、これまで未発見であったCPECにおけるカルシウム活性化クロライドチャネルの存在を明らかにした。また、その分子実体が近年クローニングされたアノクタミン1であることも明らかとした。さらに、TRPV4の活性化に伴い流入したカルシウムによってアノクタミン1が強く活性化することをHEK293T細胞と単離したCPECにおけるホールセルパッチクランプ法によって明らかにした。TRPV4とアノクタミン1において証明された機能連関は他のカルシウム透過性チャネルにおいても同様であることが考えられるため、今後はCPECのみならず、アノクタミン1の好発部位である後根神経節や顎下腺、気管上皮などにおいてもこの機能連関の生理的役割が解明されていくものと期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TRPV4プロモーター活性に依存したEGFP発現マウスの作成に成功している。また、解明が滞っていた脈絡叢におけるTRPV4の生理的役割についてある程度迫ることができた。さらに、本研究において証明されたTRPV4とアノクタミン1の機能連関は、他のカルシウム透過性チャネルにおいても同様のことが想定されるため、脈絡叢上皮細胞のみならずアノクタミン1の好発部位である後根神経節や顎下腺、気管上皮においてもこの機能連関が関わる生理機能の解明が大いに期待される。つまり、本研究は当初の予想以上に研究対象の演繹へと繋がった。
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今後の研究の推進方策 |
アノクタミンには10個のサブタイプがあり、それぞれカルシウム感受性に差があるなど性質が異なる。そのため、TRPV4を含めたカルシウム透過性チャネルとアノクタミンの機能連関について探索を進める。しかし、現時点ではアノクタミンに対する優れたリガンドは限られているので、今後数年間は比較的感受性の高いアンタゴニストが存在するアノクタミン1に焦点を絞った研究が主体になると考えられる。
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