研究概要 |
本研究の目的は,MOSFETのサブスレッショルド領域を利用した超低消費電力センサLSIシステムの設計手法の確立することにある.この目的に向け,本年度は超低消費電力で動作するADコンバータの検討を行った.ADコンバータは温度や音声などのアナログ信号を,信号処理を行う際に適したディジタル信号に変換する回路ブロックである.一般にAI)コンバータは,アナログ回路ブロックの消費電力が全体の消費電力の大半を占める.そこで,本研究では,微小電流で動作するアナログ回路を用いてADコンバータを構成することでアナログ回路ブロックの消費電力を大幅に削減し,ナノワットオーダの超低消費電力で動作するADコンバータを開拓した.また,微小電流でADコンバータを動作させる際には,温度変化や製造プロセス変動によるAD変換の特性劣化が問題となる.提案ADコンバータは,ADコンバータ内部に温度変化や製造プロセス変動による劣化を補正する回路を新たに搭載する.そして,2種類の基準電圧を用いて回路内部で温度変化や製造プロセス変動によるAD変換の誤差を計算する.計算した誤差分をディジタル信号の結果からを除去することで劣化を抑制する.提案技術を評価するために,プロトタイプを作成し,測定評価を行った.測定結果より,AD変換の特性劣化を抑制し,目標性能を実現できることを確認した.本提案ADコンバータを用いることで,低電力で動作するセンサLSIシステムを実現することができる.この研究内容を国内学会で発表した.
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