研究概要 |
本研究は, 魚類の餌としてのクラゲの重要性を評価することを目的とした. 特に, 汎世界的に発生量の多いミズクラゲと, その天敵であるカワハギを主な研究対象とし, 魚類によるクラゲ摂餌の潜在性を包括的に明らかにすることを狙った. 本年度は, 昼行性の魚類と考えられるカワハギがどの程度の照度でも摂餌可能であるかを, 水槽実験により明らかにした. すなわち, 体長8~16㎝のカワハギに対し, 4㎜×15㎜に刻んだサザエを餌として与え, その際の照度を様々に変化させた. その結果, カワハギが摂餌可能な最低照度(照度閾値)の平均値は0.065ルクスであった. この値は, これまでにタイセイヨウニシンやブラウントラウト等, 他の魚類で報告されている照度閾値よりも高く, カワハギが低照度下での摂餌を苦手とする「鳥目」な魚であることを意味する. カワハギの照度閾値はまた, 今回対象とした範囲では体長に依存しなかった. さらに, 実験時の水温を17,21および25℃の3段階に変化させた場合にも, 水温間で照度閾値に違いは認められなかった. 我々が2012年度に行った実験では, カワハギはミズクラゲのポリプを好んで摂餌し, このポリプ摂餌は水温依存であることが示されている(Marine Ecology Progress Series投稿中). 一方, クラゲのポリプは新しく作られた浮き桟橋に集中的に着生することが知られている. これら浮き桟橋の下面は照度が低く, カワハギに代表されるクラゲポリプ摂餌魚がアクセスしにくい条件となっていると推測される.
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今後の研究の推進方策 |
カワハギの生息する天然海域において照度を測定し, 実際の摂餌状況との対応を調べる必要がある. 一方, クラゲポリプの密生する海域についても, 照度データを測定し, これがカワハギの摂餌可能な照度となっているかどうかを検証する. 両者を併せることにより, クラゲの大発生を未然に防ぐような港湾設計を提言できる可能性がある.
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