研究概要 |
前年度において、9,5-縮環エーテル構造と軸不斉プロモアレン有するC15アセトゲニンであるitomanallene Aの全合成研究を行っていたが、九員環エーテル構築反応は進行しないことが判明した。そこで、laurendecumallene Bに合成標的を変更した。 laurendecumallene Bは中国近海に分布しているソゾ属の紅藻から単離されたC15アセトゲニンであり、itomanallene Aと同様のブロモアレンと8,5縮環エーテル構造を有している。この八員環を効率的に合成することが合成上の課題となる。その構造決定はNMRによってなされているが、臭素原子の相対立体配置および軸不斉、並びに分子全体の絶対立体配置は決定されていない。所属グループでは、プロモアレンがアリルジカチオン等価体として機能する性質を見出し、本反応性を利用したヘテロ中員環の効率的合成法の開発に成功している。一方、井原・吉田らはプロパルギルカルボナートがパラジウム触媒存在下求核付加を引き起こし、脱離したCO_2の固定化を伴って環状カルボナートを生じることを見出している。これらの知見をもとに、我々はプロモアレンの等価体であるプロパルギルカルボナートを基質としたパラジウム触媒による環化反応により、laurendecumallene Bの八員環を構築することを計画した。L-アラビノースを出発原料として、12工程で環化反応の基質であるプロパルギルカルボナートを合成した。種々条件を検討した結果、八員環エーテルを中程度(58%)の収率で得ることに成功した。引き続き、5工程でテトラヒドロフラン環を構築することでlaurendecumallene B中心骨格へと誘導した。さらにプロモアレン部位を合成した後、アルコールを臭素化することで、低収率(12%)ながらlaurendecumallene Bと同一のスペクトルおよび旋光度を有する化合物を得ることができた。
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