研究課題
特別研究員奨励費
鉄輸送体の三者複合体の立体構造決定を最終的な目標とし、これまでに以下の手順によって研究を進めた。まず、TTHA1628の発現、精製法の確立を目指し、三者複合体の結晶化に必要な基質結合サブユニットTTHA1628の調製のため、TTHA1628の発現、精製法の確立を行った。TTHA1628はペリプラズム局在タンパク質であるが、タンパク質中にシステイン残基を持たないので、必ずしも酸化的条件下で発現する必要はないと考えられた。そこで、シグナル配列を除去し、細胞内における還元的条件下における発現系、精製法の構築を行った。次に、TTHA1628の鉄結合能の確認を目的とし、精製したTTHA1628について、鉄結合能を確認するため、ICPAESを用いてTTHA1628に選択的に結合している金属元素の同定を行った。その結果、TTHA1628が鉄イオンを選択的に結合していることを実証した。このことから、アミノ酸配列から推定鉄輸送体と注釈がつけられていたTTHA1628-TTHA1629-TTHA1630が、確かに鉄輸送体として働くことを実証した。次に、TTHA1628の構造解析のため、精製したTTHA1628に関して鉄結合型、鉄非結合型の結晶構造を最高分解能1.8オングストロームで決定することに成功した。回折データは、放射光施設であるSPring-8やPF-ARで収集を行った。構造解析の結果、両者の構造において顕著な構造変化は見られなかったが、DLSやSAXSによる解析から、溶液中では異なる構造を取っている可能性が示唆された。またゲル濾過クロマトグラフィーによる解析から鉄結合型は鉄非結合型に比して低分子量側に溶出することが明らかとなった。現在、これらの結果の追試実験を行い、これまでのデータをまとめ、現在、論文執筆、投稿作業を行っている。また、TTHA1628-TTHA1629-TTHA1630三者複合体の結晶構造解析にむけてTTHA1628-TTHA1629-TTHA1630三者複合体に関する更なる高品質の結晶を取得し高分解能の構造を得るため、本年度は、英国オックスフォード大学に海外渡航し最先端の技術取得に励んでいる。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)
J. Biol. Chem
巻: 288 ページ: 11448-11458
Acta Crystal logr. F
巻: 68 号: 8 ページ: 911-913
10.1107/s1744309112025213