研究課題
特別研究員奨励費
カルパイン6 (CAPN6)は胎児筋のみならず成獣の再生筋にも発現し、CAPN6欠損マウスでは筋再生の促進が示唆されていた。本年度はさらにCAPN6欠損マウスの再生筋では野生型マウスと比較し、周産期型ミオシンMYH8の発現がタンパク質レベルで亢進していることを明らかとした。CAPN6欠損再生筋におけるMYH8の発現亢進はタンパク質レベルでのみ観察され、CAPN6によるMYH8タンパク質の安定化や分解系の阻害といった作用点を示唆するデータを得ることが出来た。また、本年度の重要な進捗は、CAPN6とカルパイン1 (CAPN1)との関連を明らかにした点である。CAPN1はカルシウム依存性のシステインプロテアーゼ活性により、細胞の移動、接着、分化、アポトーシスなど様々な細胞現象に関与し、組織普遍的発現パターンを示す。CAPN1は筋組織の再生が開始する時期に著しい減少が認められ、その後筋再生と共に発現量が回復してくるが、CAPN6欠損マウスでは筋再生に伴うCAPN1の発現回復が遅れることを明らかとした。このことは、骨格筋の再生過程においてCAPN6がCAPN1の発現量を調節していることを示すが、この時CAPN1の発現動態はRNAレベルでは全く変化がないため、筋再生におけるCAPN6によるCAPN1の発現調節はタンパク質レベルで行われていることが明らかとなった。カルシウム結合サイトを持つ典型的カルパインCAPN1とカルシウム結合サイトを持たない非典型的カルパインCAPN6との相互連関を明らかとしたのは本研究が初めてであり、今後筋ジストロフィーの病態における意義の解明も期待される。さらに、CAPN6欠損マウスウスでは胎児筋、再生筋だけでなく成獣マウスの骨格筋自体の形成が亢進していることを明らかとした。今後、病態のみならずスポーツ医学や食肉分野での応用も展望していきたい。
(抄録なし)
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