研究課題
特別研究員奨励費
本研究は特定のmRNP (mRNA-タンパク質複合体)を細胞内から精製する手法を確立し、これを用いてmiRM結合によるmRNPの構成変化を解析することにより、miRNA作用機序を解明することを目的としてきた。mRNP精製技術を確立するため、これまでRNP精製タグやレポーターRNAの構造、精製条件など、種々の検討を重ねてきたが、細胞内からのレポーターmRNP回収効率が著しく低いという問題が解決できず、現状ではmRNP構成成分を解析することは困難であると判断した。このため、本年度は並行して進めてきたpiRNA経路の解析に注力した。piRNAは主に生殖系列細胞に発現する24-31塩基長のsmall RNAで、Argonauteファミリーに属するPIWIタンパク質と複合体を形成し、トランスポゾンの発現抑制に機能している。piRNA生成のメカニズムの詳細は未だ不明な点が多いが、長い1本鎖のpiRNA前駆体が、PIWIタンパク質に取り込まれた後、その3'末端が適切な長さまで削られ、2'-0-メチル化修飾を受けることで成熟piRNAがつくられると考えられている。昨年度から、piRNAを介したトランスポゾンの発現抑制への関与が示唆されていたHsp90シャペロンのpiRNA生成における役割を明らかにするために、Hsp90の活性阻害によるpiRNA経路への影響をin vivo、in vitroの両面から解析してきた。その結果、Hsp90がPIWIタンパク質を安定化し、piRNA前駆体のPIWIタンパク質への正しい取り込みを促進していることを明らかにした。また、本年度はPIWIタンパク質に取り込まれたpiRNA前駆体の3'末端のトリミングを担う未知のヌクレアーゼTrimmerの同定を目指した解析を進めた。Trimmerは細胞不溶性画分に存在し、その活性を可溶化することが困難なため、これまで生化学的に同定することができなかった。この問題を解決するため、様々な活性抽出条件の検討および最適化を行った結果、一部のトリミング活性を可溶化できる条件を見出すことに成功した。
3: やや遅れている
(抄録なし)
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