研究課題/領域番号 |
11J02728
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
素粒子・原子核・宇宙線・宇宙物理(実験)
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研究機関 | 東京大学 (2012) 大阪市立大学 (2011) |
研究代表者 |
藤井 俊博 東京大学, 宇宙線研究所, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2011 – 2012
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研究課題ステータス |
完了 (2012年度)
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配分額 *注記 |
1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
2012年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
2011年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
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キーワード | 宇宙線観測 / 空気シャワー / エネルギースペクトル / 質量組成 / 大気蛍光 / 極高エネルギー宇宙線観測 |
研究概要 |
近年、宇宙極高事象を理解する手段として、宇宙空間を飛び交う高エネルギーの素粒子(宇宙線)の観測が非常に注目されている。現在、10の20乗電子ボルトを超える極高エネルギー宇宙線が観測されており、そのエネルギーは人類最大の加速器で達成可能な1粒子あたりのエネルギーよりも8桁も大きい。だが、このような巨視的なエネルギーを持つ宇宙線がどこで加速され、どのように地球に到来するのかは明らかになっていない。 本研究では北半球最大の宇宙線観測実験である、テレスコープアレイ大気蛍光望遠鏡の定常観測で集められた測定データを解析した。そして宇宙線の起源を明らかにする上で重要な極高エネルギー宇宙線のスペクトルを求めた。幅広いエネルギー領域でのスペクトルを測定するための解析手法を完成させ、10の17.5乗電子ボルトから10の20乗電子ボルトという幅広いエネルギーのスペクトルを求めた。このエネルギー領域のスペクトルは単純なべき関数ではなく折れ曲がり構造を持ち、この結果は他実験の測定結果とよく一致している。 これに加え、大気蛍光望遠鏡では宇宙線の質量組成に依存するパラメーター(空気シャワーの最大発達深さ)を測定できるため、同じエネルギー領域における質量組成を測定した。得られた結果は、10の17.5電子ボルトから10の18.5電子ボルトで重い質量組成から軽い質量組成への遷移が見られ、それ以上のエネルギーでは陽子と一致した結果を示している。 このエネルギースペクトルと質量組成の結果の解釈として、質量組成の遷移は宇宙線の起源の遷移に相当し、得られたエネルギースペクトルの折れ曲がり構造は極高エネルギー陽子と宇宙背景放射との相互作用によるものと考えられる。 これらの研究成果を博士論文としてまとめ、さらには国内の物理学会や研究会をはじめ国際会議でも報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究課題であった極高エネルギー宇宙線のスペクトルを幅広いエネルギー領域で測定した。さらには当初の計画にはなかった質量組成測定に挑戦し、非常に興味深い質量組成の遷移を観測できた。加えて、この2つの測定結果を合わせた物理的解釈に踏み込んだ議論を進めることができており、これは当初の計画以上の進展である。 今後の推進方策としては、論文出版へ向けての共同研究者間での活発な議論を行うことが挙げられる。特に先駆的にこの研究を行ってきたアメリカの共同研究者と議論することが重要である。
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今後の研究の推進方策 |
また低エネルギー領域の質量組成の測定は、統計量が豊富で、かつ物理的なインパクトも大きいため、慎重な系統誤差の見積もりが必要不可欠である。さらには各種較正値の再確認や系統誤差の見積もり、さらには望遠鏡の方向を別の測定によってクロスチェックし、より解析の信頼性を高めることが課題として挙げられる。この対応策として、GPSで制御可能な光源、または可搬紫外レーザー光源による較正を進めている。
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