研究概要 |
遷移金属触媒を利用した末端アルキンの直接アリル化反応の開発に成功した。具体的には、触媒量の塩化銅(1)ならびに1,10-フェナントロリンと量論量のリチウム-t-ブトキシドの存在下、種々の末端アルキン(シリルアセチレン・脂肪族アセチレン・芳香族アセチレン)とZ体の第2級リン酸アリルの反応が極めて高いγ位選択性及びE体選択性を伴って進行することを見出した。本反応は生理活性化合部の合成等で重要な合成中間体となるスキップドエンイン類を容易に合成可能な画期的手法である。同種の変換反応はこれまで末端アルキンを直接用いることはできず、反応性の高い有機金属反応剤による事前活性化が必須であり、官能基許容性に問題を残していた。一方で本反応は、末端アルキンを直接原料として用いることができ、優れた官能基許容性を獲得している。エステルやハロゲンをはじめとした分子の機能発現に重要なものから更なる変換に応用可能なものまで種々適応可能であった。さらに光学活性なリン酸アリル類を用いた反応では1,3-synの立体化学を伴って光学活性な生成物が得られる。生成物である1,4-エンイン誘導体はヘテロ環構築をはじめとした様々な変換反応を実施することが可能であり、実際に本手法を用いたゴナドドロピン放出ホルモン拮抗剤(GnRH antagonist)の形式全合成を達成した。また本反応は、その位置選択性の傾向からヘテロクプラートを経由していることが強く示唆されている。このことは本反応の位置選択性の発現に関わる重要な知見である。
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