研究概要 |
バフンウニの受精卵を室内にてCO2濃度が12時間毎に600ppmと1000ppmに切り替わる日周変動条件(800±200ppm)に暴露させ、幼生の形態への影響を調べた結果、800±200ppmに曝したウニ幼生の全長・体長・後腕長は対照区(400ppm)との差は見られなかった。一方、800ppmの一定濃度条件に曝したウニ幼生は対照区に比べ後腕長が減少した。これらの結果は高CO2濃度によるバフンウニ幼生のサイズ減少がCO2濃度の日周変動によって影響が緩和される可能性を示唆するものである。次に、造礁サンゴ類クシハダミドリイシから配偶子を採取し、初期ポリプへ変態させ、CO_2濃度が300,400,500ppmにて一定にした条件と、300ppmと500ppmに12時間毎に切り替わる日周変動条件(400±100ppm)にそれぞれ暴露し、投影面積を計測した結果、投影面積は対照区に比べ有意な差はみられなかった。これらの結果から、300ppmから500ppmという低レベルのCO_2濃度領域においては、濃度一定条件と日周変動条件がクシハダサンゴの初期石灰化へ与える影響には差が無い可能性が示唆された。同じく、クシハダミドリイシから配偶子を採取し、ガラスベースディッシュ上にサンゴ幼体に変態させ、着底させることに成功した。培養に用いる濾過海水をpH値の差異を可視化することができる蛍光標識指示薬HPTS-Rhod3及びSNARFをそれぞれ添加した海水に置き換え、暗黒条件下にて更に培養することでサンゴ体内のpHの可視化を試みた。その結果、サンゴポリプ体内に放射状に形成された隔壁骨格の上部やポリプ中央においてpH上昇が蛍光標識によって観察できた。このことは定着後のサンゴ幼体がこれらの部位において他の部位よりも盛んに石灰化による成長を行っていることを示唆する。この他にも貝類クサイロアオガイを用いて酸性化暴露実験を行った。280,390,600,800ppmのCO2濃度条件を用いて同様の実験を行なった結果、対照区390ppmと比較して600と800ppmにおいて原殻サイズの減少が見られた。原殻にみられた形態変化が本種の生態に及ぼす影響については明らかではないが、自己防衛や遊泳能力への影響が示唆される。
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