研究課題
特別研究員奨励費
ワカメやコンブなどの褐藻類に特徴的なカロテノイドであるフコキサンチン(以下Fx)は、抗肥満効果を有する食品素材として今後の活用が期待されている。本研究ではFxの強い抗肥満作用機構を明らかにすることを目的に、実験動物を用いて脂質代謝制御機構への影響を検討した。これまでの研究により、Fxの抗肥満効果にレプチンシグナルが関わっていることを肝臓におけるレプチンのターゲット因子である脂肪酸不飽和化酵素SCD1の発現抑制作用から明らかにした。本研究では、Fxとレプチンシグナルの関連性を明らかにすることを目的とし、レプチンを欠損する肥満ob/obマウスに対するFxの影響を検討した。その結果、KK-Ayマウスで認められた肥満や高血糖の改善効果および肝臓SCD1の発現抑制作用は認められなかった。これらの結果より、Fxの抗肥満効果や血糖値改善効果がレプチン依存的であることを明らかにし、Fxがレプチン抵抗性の改善作用を有する、肥満予防に有望な食品素材であることを示す重要な知見が得られた。一方、げっ歯類を用いた試験で報告されているFxの血中コレステロール上昇作用について、これまでに肝臓におけるLDL受容体およびスカベンジャー受容体(SR-B1)を介した、コレステロールおよびリポタンパクの取り込み低下に起因することを示した。さらに本研究では、コレステロール代謝調節に関わる転写因子であるSREBP2の発現上昇と、それにより転写調節を受けるPCSK9の遺伝子発現レベルがFxにより肝臓で増加することを新たに見出した。PCSK9はLDL受容体タンパク質分解作用が報告されており、これらがFxによる血中コレステロール上昇作用に一部関わることが明らかとなった。以上の結果は、生体内の脂質運搬を担うリポタンパク質の代謝にもFxが影響することを示唆する重要な知見である。
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