研究課題
特別研究員奨励費
丹後海及び由良川河口域をモデルフィールドとして長期的かつ網羅的な調査を行うことで、沿岸性魚類であるスズキの初期生活史における河川や河口域の役割を明らかにし、その重要性を多面的・かつ定量的に評価した。沖合の産卵場から沿岸域への仔魚の加入と冬季河川流量との間には有意な正の相関があり、冬季の河川水が物理過程及び生物過程を通じて浮遊仔魚の加入に影響していると考えられた。また、炭素安定同位体比による回遊履歴の解析及び耳石輪紋解析により、4月以降一部の成長の悪い稚魚が塩水遡上を利用して河川内に進入する一方、成長の良い個体は海域に留まり、その後それぞれの場所を7月まで成育場として利用していることがわかった。稚魚は遡上する際、塩水遡上を利用することにより、より効率よく河川内に進入している可能性も示唆された。餌環境および水温環境は河川内の方が海域より良いため、河川内を成育場とする個体の方が良く成長し、数ヶ月間で海域に留まった個体と同程度のサイズになる。河川進入個体の成魚個体群に対する寄与率を耳石Sr/Caによって推定した結果、成魚の4割ほどの個体が稚魚期に河川を利用していたと推定され、沿岸域と河川成育場の広さを考慮すると、河川は沿岸域に比べ、スズキの成育場として数倍重要な価値を持っていると推定された。それらを総合的に考察し、エスチュアリーに河口堰などを設置することにより河口域成育場が破壊されると、沿岸魚類であるスズキの個体群が重大なダメージを負う可能性を指摘した。
(抄録なし)
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