研究課題
特別研究員奨励費
本研究では、ケミカルジェネティクスの手法を用いて、パーキンソン病発症機構の解明を目的とした。これまでにパーキンソン病細胞モデル化合物MPP^+をPC12D細胞に添加すると細胞内でタンパク質の凝集体が形成されることを見いだし、この過程を阻害する低分子化合物としてSO286を見いだした。そこで以下二つの研究課題を遂行することで上記目的を達成すべく研究を行った。・研究課題A.SO286の標的タンパク質の同定と凝集タンパク質のクリアランス機構解析・研究課題B.SO286のパーキンソン病モデルマウスを用いた薬理活性評価[研究課題A]まず、SO286がオートファジーに与える影響を評価した。オートファジーとは、細胞内のタンパク質を大規模に分解する経路でありオートファゴソーム形成、オートリソソーム形成を経て実行される。その結果、SO286はオートリソソーム形成を促進することで凝集タンパク質を分解していることが明らかとなった。次にSO286の詳細な作用メカニズムを明らかにするためにSO286固定化ビーズを用いたプルダウン法によりSO286の結合タンパク質の取得を試みた。種々条件検討を行ったが、SO286ビーズ選択的に結合するタンパク質は得られなかった。そこで方法を変更し、ビオチン化SO286を用いた標的タンパク質同定を行う予定である。[研究課題B]動物モデルでの薬理活性は順天堂大学医学部・服部信孝教授との共同研究で行なった。MPP^+の代謝前駆体であるMPTP投与による急性パーキンソン病モデルマウスを用いて評価した。その結果、行動解析によりSO286には抗パーキンソン病効果があることが分かった。次によりパーキンソン病を模倣したモデルマウスであるα-synuclein A53T transgenic miceを用いて更なる検討を行う予定である。
1: 当初の計画以上に進展している
標的タンパク質の決定には現在は至っていないが、SO286の作用が明らかになり、動物試験も順調に進行したから。
研究課題Aでは、結合タンパク質取得方法を化合物固定化ビーズを用いた方法からビオチン化体を用いる方法に変更した。これにより、結合タンパク質が取得できることが期待できる。研究課題Bではよりパーキンソン病を模倣したタンパク質凝集をともなうモデルマウスであるα-synuclein A53T transgenic miceを用いて今後より詳細にSO286の抗パーキンソン病活性を評価する予定である。
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ACS Chemical Biology
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