研究課題
特別研究員奨励費
本研究は、宇宙大規模構造の解明を目指したX線マイクロカロリメータの開発をすすめることが目的となる。目的実現のため、本研究ではX線マイクロカロリメータの動作環境である極低温冷凍機の整備、信号読み出しのための超電導量子干渉計(SQUID)を用いた読み出し回路の整備を中心に研究を進めてきた。以下に、各研究項目の実施状況をまとめる。(ハードウェア開発)昨年度までに冷凍機環境の整備をすすめることでTES型X線マイクロカロリメータのX線パルス検出に成功した。このときのエネルギー分解能は5.9keVのMn-Kα線に対して90eVである。超電導遷移型X線マイクロカロリメータの本来の分光性能を制限する原因となっている磁場の対策を進めてきた。1.冷凍機の熱スイッチ開発冷凍機の熱スイッチは断熱消磁冷凍サイクルの制御上、最も基本的な要素のうちの一つである。昨年度までに私は金沢大学に熱スイッチ製作・評価環境を構築しており、今年度は熱スイッチの製作をすすめ、OFF状態で3μW/K,ON状態で2mW/Kという熱伝導度を得られることを初期実験で確認できた。2.磁場環境対策によるエネルギー分解能の改善センター部分の磁場の発生源である超電導マグネットの周囲に設置しているSiFeの磁気シールドの厚さを3mmから12mmへと変更することで、センター位置の磁場強度を最大でも地磁場程度まで落とす設計変更を行った。その後のFe55を用いたX線照射試験から5.9keV(Mn-Kα)に対して20eVのエネルギー分解能を実現できたことを確認した。
2: おおむね順調に進展している
X線マイクロカロリメータの磁場環境の理解から、対策を講じることに成功した点、ガスギャップ式熱スイッチの設計通りの熱伝導度実現を確認した点から判断した。
今後、X線マイクロカロリメータの環境構築を新たに着任する研究機関で開発をするとともに、これまで関わってきた環境を用いたさらなる基礎研究をすすめる。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (6件)
Journal of Low Temperature Physics
巻: (Online) 号: 3-4 ページ: 554-560
10.1007/s10909-012-0592-9
巻: (Online) 号: 5-6 ページ: 777-782
10.1007/s10909-012-0594-7
Publications of the Astronomical Society of Japan
巻: V63,SP3