研究課題
特別研究員奨励費
本研究では、分解機構に新たな知見を与えるために、単一バイオマス成分を使用した新しいモデル系を取り入れ、セクレトーム解析およびRNAseqを利用したトランスクリプトーム解析にて観察することを目的としている。昨年度に、担子菌Phanerochaete chrysosporiumがセルロース培地にキシランを添加すると、初期成長速度が早くなるとともに、菌体外酵素生産が増加することを明らかにした。それらはキシラン分解関連酵素だけでなく、セルロースの酸化的分解に関与すると考えられるセロビオース脱水素酵素(CDH)および糖質加水分解酵素(GH)ファミリー61タンパク質の生産も促進されることが明らかとなった。そこで今年度では、キシラン添加時に観察された現象を引き起こす原因となるキシランの構造を明らかにすることを目的とした。キシランは、キシロースがβ-1,4結合した主鎖にアラビノースやグルクロン酸、アセチル基などの側鎖が付加されたヘテロ多糖である。側鎖構造の違うキシランを添加した培地で本菌を生育させ、菌体量や菌体外酵素を解析したところ、ほとんど同じ傾向の結果が得られたことから、主鎖構造が菌体に影響を与えたことが推測された。そこで、直鎖状のキシロオリゴ糖(重合度1-4)に対するCDHの遺伝子応答を定量PCR解析によって調べたところ、キシロースには反応しない一方でキシロオリゴ糖には顕著に反応した。しかしながら、それらの応答強度は対照として測定したセロオリゴ糖に対する遺伝子応答強度よりも著しく小さかった。そこで、セロオリゴ糖を生産する主要なセルラーゼ遺伝子についてもキシロオリゴ糖に対する遺伝子応答を観察したところ、一部のセルラーゼ遺伝子(Cel7C)が顕著に二量体以上のキシロオリゴ糖に顕著に反応する事が明らかとなった。これらの結果から、キシロオリゴ糖によって誘導生産された一部セルラーゼのセルロース分解によってセロオリゴ糖の生成が促され、このセロオリゴ糖によりセルロース分解関連酵素の遺伝子全体が連鎖的に強く発現誘導されるといった増強作用を持つカスケード的応答機構が存在する可能性を示した。そこで、キシロースおよび重合度2-4のキシロオリゴ糖に対するゲノムワイドな遺伝子応答を観察するために、Illuminaシーケンサーを用いて全転写産物解析を行った。糖質関連酵素遺伝子における発現応答を解析したところ、キシラン分解酵素よりも一部のセルロース分解関連酵素遺伝子が、キシロオリゴ糖に対する高い発現応答能をもつことが明らかとなり、上述したような応答機構の存在が強く示唆された。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件) 学会発表 (4件)
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