研究課題
特別研究員奨励費
昨年度に国立天文台Subaru/IRCSを用いて実施した木星観測では、新たな展望として、Subaru/IRCSに取り付けられた補償光学を用いて、地球大気のゆらぎを補正し、望遠鏡の回折限界に迫る高い空間分解能のオーロラ観測を実施した。高い空間分解能でオーロラ帯の木星ディスク辺縁付近を観測することにより、H_2とH_3^+のオーロラ発光高度を直接導出することが可能となる。本年度は、このデータを画像解析することで、これまで未知であった赤外のH_2とH_3^+(振動準位ν_2=2→0,およびν_2=3→1)のオーロラ発光高度を直接導出した。発光高度の導出には、先行研究に習いオニオンピーリングと呼ばれる手法を用いた。これは、オーロラ発光層を複数の薄い層に区切り、上層から順に単位体積あたりの発光強度を導出する手法である。本研究で用いたオニオンピーリングの手法には2つの仮定が置かれている。一つ目は、オーロラ発光層が光学的に十分薄く、視線方向で最も奥の大気から放出された光も、途中で吸収されることなく観測者に到達する、という仮定である。二つ目の仮定は、オーロラが水平方向に一様である、というものである。私はオーロラ発光の構造をモデリングし、水平構造の影響を調べた。その結果、今回のオーロラ観測ジオメトリの条件に置いては、オニオンピーリングで得られる高度分布は、もとの高度分布をよく再現することが分かった。従って、今回の観測に対してオニオンピーリングを適用することは妥当であるという結論が得られた。近赤外高分散エシェル分光器の開発においては、昨年度新たに開発、導入した回折格子駆動機構に再現性の課題が見つかり、これを改善するための改修を施した。また、フィルター交換機構や画像・分光切替機構をはじめとする各コンポーネントを製作し、赤外分光器の完成に目処をつけた。
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