研究課題
特別研究員奨励費
シクロパラフェニレン(CPP)は、ベンゼン環がパラ位で結合した環状構造を有しており、その構造はアームチェア型カーボンナノチューブ(CNT)の最小構成単位である。よって、CNTと同様に空孔を利用したホストゲスト錯体の形成が期待できる。すでに、昨年度までに[10] CPPがC60をサイズ選択的に包摂し、最短のC60ピーポッドを形成することを明らかにしている。また、すでにC70をゲスト分子として用いた際も、[10]および[11] CPPがそれぞれC70を包摂することを明らかにしていたが、錯体の構造は理論計算により推定したのみであった。今年度は、C70とCPP、との錯体のX線結晶構造解析による構造の決定を行うと共に、これまでの空のフラーレンとは異なり、特異な電子状態を持つLa@C82との錯形成を検討した。その結果、単結晶X線構造解析の結果から、[10] CPP内ではC70の短径方向でCPPと相互作用した"Lying"と呼ばれる配向を取っていた。一方で、[11] CPP内では、C70の長径方向でCPPと相互作用した"Standing"と呼ばれる配向を取ることを実験的に明らかにした。La@C82との錯形成では、これまでと同様に特定の環サイズを持つCPPとのサイズ選択的な錯形成を明らかにし、X線結晶構造解析により錯体の構造を決定することに成功した。加えて、電気化学測定とともに理論計算を行うことで、CPPからLa@C82への部分電荷移動を観測することに成功した。これはピーポッドにおける電子的な相互作用を明らかにした初めての例である。以上の結果は、CPPをホスト分子とした新規超分子構造体の創成に繋がる結果であると共に、CNTピーポッドにおけるCNTとフラーレン間の相互作用を分子レベルで明らかにしたものであり、曲面上π分子間に働く相互作用を理解するうえで重要な知見を与えるものと考えている。
(抄録なし)
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