研究課題
特別研究員奨励費
本研究は抗癌剤耐性機構を犬のリンパ系腫瘍に焦点を絞って「腫瘍幹細胞説」と「エピジェネティック制御」という新しい観点から解明することを目的とした。前年度までの研究成果を基に今年度は薬剤耐性因子であるABCB1遺伝子の発現制御機構としてMAPK経路の活性化に着目し、薬剤によるMAPK経路活性化状態の調節を介したABCB1遺伝子発現量調節の実現を目的として研究を遂行した。MAPK経路を含む細胞内シグナル伝達系を調節する効果をもつ抗癌剤として、人医学領域においてP-gpの発現低下効果が報告されているAkt経路阻害剤ペリフォシンに着目した。まず、犬のリンパ系腫瘍細胞株であるGL-1, CLBL-1, UL-1およびEmaを用いてペリフォシンの抗腫瘍効果を検討したところ、GL-1とUL-1において、人医学領域で臨床的に達成される血中濃度(20μM)に比べて低いIC50値が得られ、これらの細胞株はペリフォシンの抗腫瘍効果に感受性であることが明らかとなった。次に、P-gp発現が認められたUL-1とEmaの2株を用いてペリフォシンによるABCB1遺伝子発現量調節効果を検討した。その結果、UL-1においてはペリフォシン添加後、ABCB1遺伝子のmRNA発現量が低下すること、およびその低下にはJNK経路の活性化が関与していることが明らかとなった。加えてペリフォシンの添加によって腫瘍細胞の細胞外への薬剤排出能が低下すること、さらには抗癌剤の一種であるビンクリスチンに対する感受性が上昇することも明らかとなった。また前年度に引き続き、これとは異なるABCB1遺伝子の発現制御機構としてDNAメチル化というエピジェネティクスに着目し、リンパ腫に権患した犬の患者から採取した腫瘍細胞を用いて解析を行った。その結果、犬のリンパ腫細胞における薬剤耐性獲得にはDNAメチル化による遺伝子発現制御機構の変化が関与している可能性が低いことが明らかとなった。
(抄録なし)
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10.3109/10428194.2012.751529