研究課題
特別研究員奨励費
筆者は、アレンから形成されるローダサイクル中間体を利用した新たな環状骨格構築法の開発を目的として研究を行ってきた。これまでにRh触媒とアレン、アルデヒド及びアルキンを分子内に有する基質を反応させると、アルデヒドとアレン及びRh錯体から形成される7員環ローダサイクル中間体を経由して8員環を含む二環式化合物が生成することを見出し、さらに4-アレナール(4-アレニルアルデヒド)とアルキン間での分子間反応への展開にも成功した。本年は、これらの8員環形成反応の開発途上で見出した、ロジウム触媒による4-アレナールの分子内ヒドロアシル化を不斉反応へと展開した。種々反応条件を検討した結果、触媒量のRh-DTBM-Segphos錯体および4-フルオロベンゾニトリル存在下、ラセミ体の4-アレナールを反応させると、目的の6員環ケトンを最高84%収率かつ95%の不斉収率で得ることに成功した。一般にアレンは、その置換形式により軸不斉を有することから、触媒的不斉反応へと展開された例は非常に少ない。その理由としては、おそらく軸不斉を有するアレンはラセミ体として存在するため、光学活性配位子を持つ遷移金属触媒と反応させると、アレンのエナンチオマーと触媒との組み合わせで速度論分割が起こるためと考えられる。今回筆者が見出した分子内不斉ヒドロアシル化反応では原料を回収することなく良好な収率かつ不斉収率で生成物を与えたことから、詳細は良く分かっていないものの、おそらく反応系中でアレンのエナンチオマー間でのラセミ化の経路が存在し、動的な速度論分割となることで、生成物の一方のエナンチオマーのみが高い収率で得られたものと考えている。この結果は、これまで触媒的不斉反応へと用いられることが少なかったアレンを様々な環化反応へと展開出来る可能性を提示するものであり、有機合成化学上有用なものと考えられる。
(抄録なし)
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