研究課題/領域番号 |
11J03784
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
食品科学
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
金子 賢太朗 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2011 – 2012
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研究課題ステータス |
完了 (2012年度)
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配分額 *注記 |
1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
2012年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
2011年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
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キーワード | 摂食調節 / δオピオイド / プロスタグランジンD2 / L-PGDC / 低分子ペプチド / 高脂肪食 / くも膜 / メラノコルチン / 食欲調節 / L-PGDS |
研究概要 |
種々の食品タンパク質由来低分子ペプチドによる摂食調節作用を検討した結果、緑葉の主要タンパク質Rubisco由来のδオピオイドペプチドであるrubiscolin-6(YPLDLF)が経口投与(0.3mg/kg)により摂食促進作用を示すことを見出した。rubiscolin-6は経口投与により摂食促進作用を示す初めてのペプチドである。rubiscolin-6の経口投与による摂食調節作用は、中枢δオピオイド受容体の下流で、新規摂食促進経路であるプロスタグランジン(PG)D2-ニューロペプチドY系を活性化によることをこれまでに明らかにしている。さらに最近、PGD2の合成酵素であるリボカリン(L)型PGD合成酵素(L-PGDS)を介していることを見出した。中枢神経系で最も多く存在するPGであるPGD2は、脳を包むくも膜および脳実質のオリゴデンドログリアに局在するL-PGDSにより生合成される。そこで本研究ではCre/loxPにより脳実質のL-PGDSを選択的に欠損させたコンディショナルKOマウス(L-PGDS脳実質KOマウス)を用いて、どの部位のL-PGDSがrubiscolin-6の摂食促進作用に寄与しているかを検討した。 L-PGDS KOマウスではrubiscolin-6の経口投与による摂食促進作用が完全に消失したが、L-PGDS脳実質KOマウスでは摂食促進作用が認められた。したがって、rubiscolin-6の摂食促進作用にはくも膜のL-PGDSが関与していることが示唆された。以上の結果から、rubiscolin-6の経口投与および脳室内投与による摂食促進作用は、中枢δオピオイド受容体の下流で、L-PGDS、特に、くも膜のL-PGDSおよびPGD2-NPY系の活性化を介することを明らかにした。くも膜が摂食調節に関与することを示した初めての例である。 一方、2週間以上、高脂肪食で飼育したマウスにrubiscolin-6を投与したところ、普通食の摂食促進作用の場合とは逆に、高脂肪食摂取量を低下させることを見出した。この高脂肪食摂取の抑制は、普通食の摂食促進作用の場合と同様に、δオピオイド受容体アンタゴニストnaltrindoleの脳室内投与で阻害されたことから、中枢δオピオイド受容体を介していることが判明した。δオピオイドアゴニストが高脂肪食摂取を抑制することを初めて示した。さらに数種の外因性神経調節ペプチドが経口投与により摂食調節作用を示すことを明らかにした。また、rubiscolin-6の経口投与によりマウス行動量が低下することを見出し、睡眠誘発作用が期待できることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究により、δオピオイドアゴニストの経口または中枢投与による摂食促進作用を見出した。また、強力な睡眠誘発物質であるプロスタグランジンD2および今まで機能が不明確であったクモ膜が摂食促進作用に重要であることを初めて示した。さらに、δオピオイドが高脂肪食摂取を抑制することを世界に先駆けて見出した。研究は順調に進展した。
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今後の研究の推進方策 |
δオピオイドアゴニストによる普通食摂取促進および高脂肪食摂取抑制の両作用は、中枢δオピオイド受容体を介している。そこで、これらの両作用のスイッチの切り替えメカニズムを明らかにするため、薬理学的手法や遺伝子改変動物だけでなく、コンディショナル遺伝子欠損技術の導入や免疫組織化学的手法により、効率的に研究を進める必要がある。
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