生体分子デバイスの構築に向けた生体内電子移動に関する理論的研究

• 研究課題/領域番号: 11J03881
• 研究種目: 特別研究員奨励費
• 配分区分: 補助金
• 応募区分: 国内
• 研究分野: 機能物質化学
• 研究機関: 九州大学
• 研究代表者: 辻 雄太 九州大学, 先導物質化学研究所, 特別研究員(PD)
• 研究期間 (年度): 2011 – 2013
• 研究課題ステータス: 完了 (2013年度)
• 配分額: 1,900千円 (直接経費: 1,900千円); 2013年度: 600千円 (直接経費: 600千円); 2012年度: 600千円 (直接経費: 600千円); 2011年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
• キーワード: 分子デバイス / 分子伝導 / コンダクタンス / グリーン関数 / フロンティア軌道 / 分子スイッチ / ジアリールエテン / 分子エレクトロニクス / 分子ダイオード / 電荷移動錯体 / キノン / キンヒドロン / π-π相互作用 / 非平衡グリーン関数法 / 単一分子デバイス

研究概要

将来のデバイス化を見据えて、単分子計測の技術を駆使した分子の伝導度計測が盛んである。特に、フォトクロミック分子の伝導性は光異性化に伴って大きく変化するため、分子スイッチとしての応用が期待されている。Tamらは代表的なフォトクロミック分子であるジチエニルエテンについてその伝導度のON/OFF比をおよそ2桁程度であると報告している。一方、Roldanらはジチエニルエテンとは別のフォトクロミック分子であるジヒドロピレンについてその伝導度のON/OFF比をおよそ4桁程度であると報告している。両者とも電極と分子の接続にはピリジンをアンカーとして用いており、このON/OFF比の違いは主にπ骨格に起因するものと考えられる。そこで、我々は単純ヒュッケル法とグリーン関数法を組み合わせたアプローチによってこの系の伝導性について解析を行い、電極と分子の接点におけるフロンティア軌道の位相と振幅がジアリールエテンのスイッチ特性を支配していることを見出した。さらに、電極と分子を接続する位置(アンカーの置換位置)を変えることでON/OFF比を調整することが可能であることなども見出した。これは従来OFF状態であると考えられていた開環体がON状態として振る舞い、他方、従来ON状態であると考えられていた閉環体がOFF状態として振る舞う系の構築も可能であることを示唆しており、分子デバイスの設計の幅をさらに広げる有用な知見である。

今後の研究の推進方策

(抄録なし)

研究成果

• [雑誌論文] A Bipodal Dicyano Anchor Unit for Single-Molecule Spintronic Devices (2013)
  • 著者名/発表者名: 辻雄太・瀬本貴之・吉澤一成
  • 雑誌名: ChemPhysChem 巻: 14 号: 11 ページ: 2470-2475
  • DOI: 10.1002/cphc.201300136
  • 査読あり
• [雑誌論文] Asymmetric Diarylethene as a Dual-Functional Device Combining Switch and Diode (2013)
  • 著者名/発表者名: 辻雄太・古賀惇也・吉澤一成
  • 雑誌名: Bulletin of the Chemical Society of Japan 巻: 86 号: 8 ページ: 947-954
  • DOI: 10.1246/bcsj.20130089
  • NAID: 10031189237
  • 査読あり
• [雑誌論文] Role of Edge Oxygen Atoms on the Adhesive Interaction between Carbon Fiber and Epoxy Resin (2013)
  • 著者名/発表者名: 瀬本貴之・辻雄太・田中宏昌・吉澤一成
  • 雑誌名: Journal of Physical Chemistry C 巻: 117 号: 47 ページ: 24830-24835
  • DOI: 10.1021/jp407835d
  • 査読あり
• [雑誌論文] Orbital Determining Spintronic Properties a π-Conjugated System (2012)
  • 著者名/発表者名: Tsuji, et a1
  • 雑誌名: Journal of Physical Chemistry C 巻: 116 号: 30 ページ: 16325-16332
  • DOI: 10.1021/jp305448q
  • 査読あり
• [雑誌論文] Current Rectification in Nitrogen- and Boron-Doped Nanographenes and Cyclophanes (2012)
  • 著者名/発表者名: Staykov, et a1
  • 雑誌名: Journal of Physical Chemistry C 巻: 116 号: 34 ページ: 18451-18459
  • DOI: 10.1021/jp303843k
  • 査読あり
• [雑誌論文] Current Rectification through tt-πStacking in Multilayered Donor-Acceptor Cyclophanes (2012)
  • 著者名/発表者名: Tsuji, et a1
  • 雑誌名: Journal of Physical Chemistry C 巻: 116 号: 50 ページ: 26625-26635
  • DOI: 10.1021/jp308849t
  • 査読あり
• [雑誌論文] Molecular Rectifier Based on π-π Stacked Charge Transfer Complex (2012)
  • 著者名/発表者名: Tsuji, et al
  • 雑誌名: Journal of Physical Chemistry C 巻: 116 号: 3 ページ: 2575-2580
  • DOI: 10.1021/jp209547a
  • 査読あり
• [雑誌論文] Dependence of Single-Molecule Conductance on Molecule-Junction Symmetry (2011)
  • 著者名/発表者名: Taniguchi, et al
  • 雑誌名: Journal of the American Chemical Society 巻: 133 号: 30 ページ: 11426-11429
  • DOI: 10.1021/ja2033926
  • 査読あり
• [学会発表] フロンティア軌道が支配するジアリールエテンのスイッチ特性 (2014)
  • 著者名/発表者名: 辻雄太・Roald Hoffmann
  • 学会等名: 日本化学会第94春季年会
  • 発表場所: 名古屋大学
  • 年月日: 2014-03-27
• [学会発表] πスタック系を用いた新規な分子ダイオードの提案 (2012)
  • 著者名/発表者名: 辻 雄太
  • 学会等名: 第6回分子科学討論会
  • 発表場所: 東京大学本郷キャンパス(東京)
  • 年月日: 2012-09-18
• [学会発表] Molecular Rectifier Based on Charge Transfer Complex (2012)
  • 著者名/発表者名: 辻 雄太
  • 学会等名: ICSM2012
  • 発表場所: アメリカ
  • 年月日: 2012-07-09
• [学会発表] πスタック分子ダイオード (2012)
  • 著者名/発表者名: 辻 雄太
  • 学会等名: 第15回理論化学討論会
  • 発表場所: 仙台市福祉プラザ(宮城)
  • 年月日: 2012-05-25
• [学会発表] 電荷移動錯体をもとにしたπスタック分子整流器 (2012)
  • 著者名/発表者名: 辻雄太
  • 学会等名: 第92春季年会(2012)
  • 発表場所: 慶應義塾大学(横浜)
  • 年月日: 2012-03-27
• [学会発表] Cyclophane-Type Molecular Rectifier (2012)
  • 著者名/発表者名: 辻雄太
  • 学会等名: The 4th French-Japanese Workshop on Computational Methods in Chemistry
  • 発表場所: 志賀島(福岡)
  • 年月日: 2012-03-05
• [学会発表] フロンティア軌道に基づいた分子伝導性の定性的な理解 (2011)
  • 著者名/発表者名: 辻雄太
  • 学会等名: 第5回分子科学討論会
  • 発表場所: 札幌コンベンションセンター
  • 年月日: 2011-09-20
• [学会発表] 単一分子の電子輸送における硫黄アンカーの影響 (2011)
  • 著者名/発表者名: 辻雄太
  • 学会等名: 九重分光関連夏期セミナー2011
  • 発表場所: 九重共同研修所(大分)
  • 年月日: 2011-07-30
• [学会発表] 単一分子の量子輸送におけるフロンティア軌道の役割 (2011)
  • 著者名/発表者名: 辻雄太
  • 学会等名: 第14回理論化学討論会
  • 発表場所: 岡山大学創立五十周年記念館
  • 年月日: 2011-05-13
• [備考]
  • URL: http://blogs.cornell.edu/hoffmann/yuta-tsuji/