研究課題/領域番号 |
11J04045
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
自然人類学
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松田 一希 京都大学, 霊長類研究所, 特定助教
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研究期間 (年度) |
2011
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研究課題ステータス |
完了 (2011年度)
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配分額 *注記 |
800千円 (直接経費: 800千円)
2011年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
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キーワード | テングザル / マントヒヒ / ゲラダヒヒ / キンシコウ / 重層社会 / 霊長類 |
研究概要 |
川辺林とマングローブ林内におけるテングザルの生態・社会を明らかにし、両生息地の重層社会の構造を比較することが本研究の目的である。川辺林における本種の生態・社会は申請者の先行研究により、ある程度明らかにされつつあるため、データ量の不足しているマングローブ林の生態を明らかにすることが重要である。 マングローブ林におけるテングザルの生態を調査するにあたり、調査予定地においての予備調査を行った。マングローブ林内は泥濘が激しい地域が多く、テングザルの餌資源量を見積もるための植生調査区の設置場所などについて現地の調査助手とともに検討を行った。マングローブ林の中でも、若干ながら乾燥した土地が点在していることを確認するとともに、その中から植生調査区を設置可能な6地点を選定した。また、調査地内の支流にてテングザルの個体数などを確認した。追跡調査についは、マングローブ林内の泥濘が当初考えていたよりも深刻なために、ラジオテレメトリーをテングザルに装着し、その移動パタンを明らかにすることにした。ラジオテレメトリーの装着には、テングザルの捕獲が必要であるため、その捕獲のために必要な許可証などを現地の野生生物局のオフィスにて繰り返し議論した。その結果、来年度のからのラジオテレメトリーの装着計画が、野生生物局によって承認された。 フィールド調査と平行して、他の霊長類種における重層社会との比較・検討を行う試みも開始した。2010年9月に開催された国際霊長類学会において、「Multi-level Societies in Primates」というシンポジウムを企画した。また、そのシンポジウムの参加者らに論文の執筆を依頼して、International Journal of Primatology誌において特集号を編集している。申請者は特集号の編集だけでなく、特集号へ自身の研究論文も投稿した(Matsuda et al.,in press)。本論文では、テングザル、キンシコウ、ゲラダヒヒ、マントヒヒといった、重層社会が報告されている霊長類種のハレム群内の個体間関係の詳細な比較を行った。本比較研究にあたり、各霊長類種を研究している海外の共同研究者からの行動データの提供を呼びかけるとともに、ソーシャルネットワーク分析という新しい分析手法も取り入れた。どの霊長類種もハレム群を基本的なユニットとして、そのハレム群が集まりさらに高次の社会を作るという点では共通した社会性を有するが、そのハレム群内の個体間関係には各種で違いが見られることが明らかとなった。重層社会を形成するもっとも基本的なユニットである、ハレム群内の個体間の関係性を体系的に比較・検討した研究は今までになく、重層社会形成にはどのような個体間関係が背景としてあるのかを明らかにした初めての研究となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りにおおむね進展しているが、マングローブ林内でのテングザルの観察と追跡が困難であることが判明したために、観察手法の変更が生じた。直接観察と追跡が困難であるため、ラジオテレメトリーを用いることに手法を変更した。本手法には動物の捕獲が必要でるため、現地の政府との新たな交渉が必要となり、当初の予定を若干変更した。
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今後の研究の推進方策 |
当初予定していたテングザルの直接観察と追跡を変更して、ラジオテレメトリーを用いて、マングローブ林に生息する本種の追跡・観察を行うことにする。群れ間の社会交渉については、たとえ侵入が困難なマングローブ林においても、川沿いから十分に観察が行えることが確認できたために、社会交渉の観察に関しては、当初の計画通りに直接観察で行動記録を行う。
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