研究概要 |
本研究は多孔質体中の物質移動における界面の形状効果を解明するため,粒子層への銅の析出実験を利用し,粒子層端部近傍における物質移動について調べることを目的としている.本実験では下部にステンレス粒子層,上部に銅板を設置し,内部を硫酸銅水溶液で満たした準2次元の析出実験セルを用い,粒子層と銅板の間に電位差を与えることによって粒子層表面に銅を析出させた.前年度に取り組んだ析出過程におけるイオン挙動の可視化手法の開発に加え,当該年度ではさらにイオンの濃度場の2次元分布を非接触測定する手法を開発,提案した.銅イオンの吸光ピークである近赤外線を析出実験セルの裏側から照射すると,セル内部の銅イオンは局所的なイオン濃度に対応して非一様な吸光度を示す.こうした吸光度と濃度との線形関係を利用して,セル内部の2次元の吸光分布をマイクロスコープで撮影し,得られた画像から濃度場を逆計算する.濃度場の結果から,垂直に設置されたセルの内部で析出反応により重力不安定(重力と逆方向の濃度勾配)が生じていることが示された.また本手法の開発により,重力不安定によって引き起こされた対流の挙動に関して,数100マイクロメートルの空間解像度で,0.01Mのオーダーの濃度場の詳細な変化を非接触測定することに成功した.当該年度で得られた結果を含む1編の論文が査読付き国際的ジャーナルに現在投稿中であり,さらにもう1編の論文も投稿予定である. また,多孔質体中の透過流動に関しては,多分散粒子層中の透過率を理論計算によって評価し,粒子サイズ分布,および異なるサイズを有する粒子の空間分布が透過特性に及ぼす影響について調べた.具体的には,さまざまな粒径の粒子がランダム,層状,およびその中間の非一様な分布を有する場合に着目して解析を行った.結果として,粒径の異なる粒子が非一様に分布した多分散粒子層中の透過流動のメカニズムを明らかにした.
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