研究概要 |
本年度は, 非自励離散有限戸田格子と非自励離散有限Lotka-Volterra格子との間のMiura型変換と呼ばれるものを一般化し, 有限R_<II>格子と非自励離散有限mKdV格子との間のMiura型変換を導出することに成功した. Miura型変換とは, mKdV方程式の解からKdV方程式の解への変数変換としてR. M. Miuraによって導出されたものに由来し, これが存在すればある力学系と別の力学系を同一の時間軸の上で直接的に結び付けることができる. 例えば, 非自励離散有限戸田格子の変数はある三重対角行列の固有値へと収束する性質があるので, 固有値計算へと応用することが可能である. 一方, 非自励離散有限Lotka-Volterra格子から非自励離散有限戸田格子へのMiura型変換が存在するので, 非自励離散有限Lotka-Volterra格子を用いても三重対角行列の固有値が計算可能であることが直ちに示される. このように, Miura型変換を調べることは応用上も重要な問題である. 有限R_<II>格子については, 昨年度の研究で三重対角行列束の一般化固有値計算アルゴリズムへの応用がなされているが, 今年度の成果によって, 非自励離散有限mKdV格子によっても三重対角行列束の一般化固有値計算が可能であることが明らかとなった. この成果については, 可積分系理論専門のオンラインジャーナルであるSIGMA誌に論文を投稿し, 既に出版されている. また, 学会発表を国内で2件行い, その報告として九州大学応用力学研究所研究集会報告に和文論文1編が掲載された. なお, ここに現れた非自励離散mKdV格子とは, 運搬車付き箱玉系を最初に導出する際に用いられたものであり, 理論的にも興味深い結果となっている.
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