研究課題/領域番号 |
11J04127
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
神経科学一般
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
高野 哲也 首都大学東京, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2011 – 2012
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研究課題ステータス |
完了 (2012年度)
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配分額 *注記 |
1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
2012年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
2011年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
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キーワード | LMTK1 / AATYK1 / Cdk5 / Rab11 / 樹状突起 / リサイクリングエンドソーム / 膜輸送 / 神経細胞 / 軸索伸長 |
研究概要 |
神経細胞は、軸索とは機能的にも構造的にも異なるもう一種の神経突起である樹状突起を有することが知られている。LMTK1は軸索への膜供給を制御していることは示されたが、それは軸索特異的なのか、もしくは軸索と樹状突起の両方を制御しているのか疑問が残る。そこで、これらの疑問を解決するためにLMTK1による樹状突起形成における役割について検討した。LMTK1のshRNAを樹状突起形成期に導入したところ、樹状突起の形成が促進されることが判った。これらの結果を確認するために、LMTK1欠損マウス由来の神経細胞を用いて樹状突起の形態を調べたところ、同様の過形成が観察された。また興味深いことに、LMTK1欠損マウス脳内のV層の錐体神経細胞においても尖端樹状突起、基底樹状突起のいずれの形成も顕著に促進していることが判った。その仕組みを詳細に検討したところ、LMTK1欠損マウスではRab11活性が上昇していることが判った。さらに、LMTK1欠損マウスでは順行性リサイクリングエンドソームが増加し、その速度及び移動距離が著しく亢進していることが判った。本研究によって、これまで未解明であったLMTK1の神経細胞における生理的機能として、Rab11を介した膜輸送制御による軸索及び樹状突起形成が初めて明確に示された。また、このLMTK1の活性はCdk5・p35によるSer34のリン酸化によって調節されていた。即ち、Cdk5-LMTK1/AATYK1-Rab11というシグナル経路は、軸索及び樹状突起形成を膜の供給を介して制御する新たな経路であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初は、LMTKIの神経細胞での生理的機能を明らかにすることが計画されていた。しかしながら、当初の目標達成に加えて、Cdk5-LMTK1-Rab11という新しいシグナル経路が軸索及び樹状突起形成を制御していることを初めて明確にし、'これらの知見は世界的に高い評価を得た。また現在は今年度行った研究成果を投稿論文にまとめ、投稿中である。これは、当初の計画以上の成果である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、LMTK1の膜輸送制御による軸索及び樹状突起形成を明らかにした。最近、リサイクリングエンドソームの異常がアルツハイマー病などの神経変性疾患を引き起こすことが報告されている。そのため、アルツハイマー病発症にLMTK1が関与している可能性が高い。実際に、申請者は既にアルツハイマー病の原因因子がLMTK1によって輸送制御されていることやアルツハイマー病患者脳でLMTK1のリン酸化状況が変化していることを見出している(未発表データ)。そこで、今後はアルツハイマー病発症機構をLMTK1によるエンドソーム輸送制御に着目して解析する必要がある。
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