研究概要 |
哺乳類内耳蝸牛血管条は,内リンパ直流電位の生成および内リンパ産生を担い,この特徴は聴覚機能の発現に必要不可欠である。血管条の機能不全は直ちに難聴を引き起こす。血管条は特異な毛細血管網を有し,エネルギーを大量に消費しながら活発なイオン輸送を行っている。しかし,この高い代謝活性を維持するための詳細な糖輸送メカニズムは未だ不明である。これまでの糖輸送体遺伝子の網羅的な発現解析から,それぞれ特有の機能を有する複数の促進拡散型の糖輸送体(GLUT)が蝸牛管側壁に発現していることを明らかにしている。 今年度は昨年度から引き続き,遺伝子発現が確認できたGLUTタンパク質の特異的抗体を入手し,蝸牛管側壁におけるその局在を免疫染色法により解析した。その中でもGLU13(HMIT)については,血管条単離細胞を用いた解析により発現する細胞種の同定をおこなった。脳において,HMITはイノシトールリン脂質の代謝に重要な役割を果たしていると予想されている。HMITはH^+の輸送にも関わっていることから,内リンパ液のpH調節に関与している可能性も示唆された。 さらに血管条において毛細血管網と機能分子の組織構造を保持したまま3次元観察可能となる新たな方法を開発した。この方法を用いて,その他の遺伝子発現が確認されたGLUTファミリーについても蝸牛血管条における局在解析を行っている。
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