研究概要 |
本研究では,人工衛星の光学センサと合成開口レーダ(SAR)センサの強みを組み合わせた,自然災害後早期に被災地域の抽出する手法を開発することを目的としている.具体的には,災害前の光学画像とSAR画像,事前の数値標高データ(DEM),さらに災害後に緊急撮影されるSAR画像などを用いて,被災の範囲と程度を抽出する手法を提案し,事例により検証する.本年度で実施する予定の「災害地域のSAR画像を用いた被害状況の把握」と「成果のまとめと論文の作成」が達成できた.さらに,TerraSAR-X画像の高解像度とSARセンサの斜め観測する特徴を利用し,1棟単位で建物の高さを検出する手法を構築した. 2011年東北地方太平洋沖地震に対して,地震前後に岩手県,宮城県と福島県を撮影した計13枚のTerraSAR-X画像を用いて,地震による広域に発生した地殻変動の検出を行った.検出された2次元の変動量は,国土地理院が画像の範囲内に設置したGPS電子基準点の33つの観測データを用いて検証した.検出された変動量における平均誤差は東方向に0.16m,南方向に0.03mであった.3mの地上解像度と比べて,構築した検出手法はサブピクセル単位で2次元の変動量を検出することが証明された.さらに,異なる軌道で宮城県を撮影した6枚の画像から検出された3ペアの2次元変動量から,実際に発生する3次元の変動量を推定することができた.GPS電子基準点のデータと比較した結果,推定された3次元の地殻変動量は水平方向での誤差が0.05m,垂直方向で0.19mであった. また,アメリカのサンフランシスコを撮影した地上解像度が1mのTerraSAR-X画像における建物の倒れ込みを自動に検出する手法を構築し,1棟単位で建物高さの検出を行った.数値表層モデルを用いて,その精度を検証した.対象地域における70%の建物高さが推定され,結果の平均二乗誤差が2.7mであり,階高の3mより小さいことが証明できた。
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