研究課題
特別研究員奨励費
ベンゾキノリル配位子を有する中性五配位ケイ素錯体の合成を行い、その光吸収・発光挙動について検討した。まず、剛直な骨格を有するベンゾ[h]キノリル配位子を用いて五配位ケイ素含有ジベンゾシレピンの合成を行った。単結晶X線構造解析により、ジベンゾシレピンのベンゼン環はメチル体においてアピカル位とエクアトリアル位を一つずつ占めており、フッ素体においては二つのエクアトリアル位を占めているため、結晶中における錯体の構造が大きく異なっていることが確認された。また、光学測定からメチル体ではストークスシフトが小さく、フッ素体ではそのシフトが大きくなることを明らかにした。次に、五配位ケイ素含有ジベンゾシレピンのシレピン上置換基が光学特性に及ぼす影響について検討した。ケイ素に対してパラ位を置換した場合(パラ置換体)、電子供与性の置換基によりベンゾ[カ]キノリル配位子の電荷移動性の発光が長波長側へ移動した。ケイ素に対してメタ位を置換した場合(メタ置換体)、ジベンゾシレピンのビニレン基を介して共役が拡張し、配位子ではなくジアリールジベンゾシレピンの発光が得られた。さらに、五配位ケイ素含有ジベンゾシレピンを主鎖に有する共役系高分子を合成した。ジベンゾシレピンのパラ位でフルオレンと連結されたポリマーでは、励起された主鎖からベンゾ囲キノリル配位子へのエネルギー移動が起こり配位子からの発光が得られた。ベンゾシレピンのメタ位でフルオレンと連結されたポリマーでは、ケイ素上の置換基がフッ素の場合に、メチル置換体の高分子と比較して長波長側に吸収が見られた。本手法は高配位状態のケイ素上にキノリン型の配位子をはじめとする有機π共役系部位を集積し、錯体の構造を活かした相互作用により光学特性を調節した点において有用であると考えられる。
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