研究概要 |
MgにZnおよび希土類元素(RE)をそれぞれ微量添加したMg-Zn-RE合金は非常に優れた力学的特性から注目されている, この特性にはMg-Zn-RE合金の2つの特徴、合金内に長周期積層規則構造(LPSO : long-periodstacking/order)相という特徴的な構造を有する相が形成されること、変形時にLPSO相がキンク変形と呼ばれる特異な変形機構を取ること、が寄与していると考えられている. 今年度は、キンク変形帯近傍に存在する特徴的な欠陥の原子構造、また欠陥近傍の添加元素分布に関して電子顕微鏡法を用いて調査を行った. 前年度までの調査から、キンク帯近傍にはhcp構造のいわゆるa・c方向への変位を含む2種類の欠陥が配列していることが確認されている, 2種類の欠陥について原子構造を調査したところ、それぞれ欠陥1つ辺りの総変位量(バーガースベクトル)はhcp構造の完全a転位・(a+c)転位に対応していることが明らかとなった. また転位芯部分で2つの完全転位は、対応する部分転位に分解しており(Shockleypartial・Frankpartial)、転位の拡張に伴って芯近傍では元の構造と比較して添加元素が散逸した領域が形成されている様子が確認された, この領域では、転位の拡張に伴ってLPSO相の積層が局所的に変化することにより、添加元素の安定位置が変化し、拡散によって添加元素分布が変化したのだと考えられる. 同様な現象は合金中でLPSO相近傍に存在するα-Mg相についても確認された. この添加元素の拡散を伴う特徴的な欠陥構造は、変形を比較的高温(623K)で行っているために形成されたと考えている. また、こうした欠陥がキンク帯近傍に配列することによって、一度形成されたキンク界面はさらなる塑性変形に対して強い抵抗として働くことが想定されるため、本合金の優れた力学特性が発現しているのではないかと考えられる.
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